メンヘラと付き合うとどうなる?【メンヘラ彼女と付き合って精神崩壊した話 Part.11】

 

f:id:Hm88100608:20181213233707p:plain

 

Epsode.11 【始まり】

 

1月19日。雪が降っていました。

ユキからラインが来ました。

 

「隼人さん話たい事があります。」

 

前回のフり方はあまりにも中途半端でした。

 

 『今回はちゃんと断ろう。』

そう思いながら、もう一度ユキから告白されるのを待っていた自分がいました。

僕は嬉しいような、切ないような、もどかしい気持ちに包まれました。

 

 

時刻は18時。

ひらひらと淡い雪が舞う中、僕はバスに乗りコメダ珈琲に向かいました。

雪は積もってはいませんでした。

 

 

  


 

僕が到着してから、10分程遅れてユキはやって来ました。

首に巻いたマフラーにくっついた雪の破片が溶け出して光って外の寒さを物語りました。

 

「こんな雪の中すみません。」

彼女は律儀に言いました。

 

「いや全然オレ雪好きだから笑」

これは僕の本心です。

僕は雪が降ると元来はしゃぎたくなる小学生と同じ感覚の持ち主でした。

そんな中、家で大人しくしているのも嫌だったのでユキからの連絡に了承した部分もありました。

 

 「私も雪好きです。」

彼女は答えました。

僕らの感覚はやはりどこか似ているようです。

 

「積もるかなー。」

 

「どうですかねー?」

 

「積もったらみんな呼んでカマクラ作ろうぜ。」

 

彼女は笑いました。

 

 

「話しは何?」

と言う僕の問いに対して彼女は

 

「ちょっと待って下さい‥」と答えました。

 

僕もそこまで鈍感じゃありません。

彼女の気持ちは十分に分かります。

僕は追求する事を辞めていつものようにたわいも無い話をしました。

 

「雪合戦てなんか可愛らしい響きだけど実際相当危険な遊びだよな。オレ何回も怪我してるもん。」

 

「どんだけ激しいんですか!笑」

そんな下らないやり取りはいつものように盛り上がりました。

しかし頭の中で僕は告白されたらどうやって断ろうと言う事に思いを巡らせていました。

 

どんな言葉を使えば彼女を傷つけないだろうかと。

 

 

しかしいつまで経っても彼女は本題に入ろうとしませんでした。

もうコメダは閉店間際でした。 

灰皿には僕らが吸ったタバコの吸い殻が積もっていました。

窓から外を見ると雪は積もる事なく止んでいました。

 

「そろそろ帰ろうか。」

 

「はい‥分かりました。」

彼女は煮え切らない様子で答えました。

 

「帰る途中話します。」

そしてそう付け加えました。

 

 

 

 


 

歩道にうっすらと積もっていた雪は歩行者の足跡でかき消されていました。

街路樹に僅かに降りかかった雪だけがさっきまでの面影を残していました。

ユキは寒そうに白い息を吐きながら歩きました。

次の信号を渡ったらもう僕らが別れる道です。

 

彼女は黙っていました。

 

 

 

「あの、ユキちゃん‥」

僕は耐えかねて漏らしました。

 

 

 

「すいません‥この信号を渡ったら言います。」

 

 

 

 


 

信号が赤から青に変わるまでの間、彼女からの緊張感が伝わってきて愛おしい気持ちが溢れました。

 

『ごめんな。』

それでも僕の心の中にはその言葉が準備してありました。

 

 

信号が青に変わりました。

僕等は横断歩道を一歩一歩踏みしめてゆっくりと渡りました。

横断歩道を渡りきってもまだ彼女は言葉を発せずしばらく歩きました。

周りを歩く人達は足早に通り過ぎ人並みが切れました。

 

 

 

 

 

「隼人さん!」

 

彼女は言いました。

僕は驚きました。

あまりにも不器用すぎる切り込み方です。

声が裏返っていました。

 

 

 

 

 

 

「私隼人さんの事が好きなんです!」

 

僕はびっくりして彼女の顔を見ました。

瞳が涙で潤んでいました。

胸が詰まりました。

 

「ダメだって言う事は分かってるんです。でもちゃんと言わないとモヤモヤするから。ごめんなさい。」

 

 

後ろの信号機が青に変わってまた人並みが流れ始めました。

ユキは最初から答えを知っていました。

僕達が結ばれてはいけない事。

僕が用意している言葉を。

彼女の頬に涙が伝いました。

 

 

 

「ごめんな。」

僕は胸の中にあった言葉を吐き出す事が出来ませんでした。

 

そしてその言葉を捨てました。

彼女の事を守れるのは自分しかいない。 

 

 

 

 

『もうどうにでもなれ!!』

僕は彼女の冷えきった手を握りました。

 

 

 

 

「みんなには内緒だからな。」 

 

口を伝ったのはそんな卑怯な言葉でした。

 

 

 

1月19日。初雪の寒い冬の日に僕達は付き合い始めました。

 

 

メンヘラちゃん

メンヘラちゃん

  • provided courtesy of iTunes

 

Part.12 へ続く 

www.kyabeta.net