メンヘラと付き合うとどうなる?【メンヘラ彼女と付き合って精神崩壊した話 Part.12】

 

 

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Epsode.12 【亀裂】

 

1月19日。

格して僕はユキと付き合い始めました。

それでもその状況を手放しで喜べるような心境ではありませんでした。

ユキの事は多分好きです。

それでも好きと言う気持ちより「心配」と言う気持ちの方が勝っていた気がします。

 

『彼女の事を守らなきゃ』

あの瞬間そんな責任感に僕は刈られていました。

Aとのバンドがどうでもいいと思い始めながらも、彼とのバンドに夢を見ていました。

彼は言いました。

 

「オレとのバンドを続けるのであればもうユキとは会わないでください。」

そしてその条件を僕は飲みました。

 

お互いあまりにも近い距離にいる存在です。

バレずに交際を続けるのは不可能なような気がしました。

 

『この先どうなるんだろう』

不安と憂鬱、喜び。

例によって複雑な心境でした。

およそ恋人が出来た時になりえる心境ではありませんでした。

それでもユキからラインが来た時に僕は悦に浸りました。

 

 「隼人さん楽しかったです。ありがとうございます!本当に今日は夢見たいな日でした!大好きです!」

 

彼女がどんな心境でこの文章を送って来たのかは分かりません。

それでも僕は思いました。

 

「なんとかなるか

 

  


 

1月20日、Aとバイトが被っていました。

前回あれだけ険悪な雰囲気になったので気まずくないはずがありません。

しかし、ユキやりょうたにあれだけの事を告げられても僕はその気持ちを彼にぶつけようと言う気持ちはありませんでした。

Aも前回のように露骨な嫌悪感を僕に浴びせてはきませんでした。

僕達はバックヤードで顔を合わせました。

 

「おはよー。」

僕はそう声をかけました。

 

「おはよーございます。」

彼は返しました。

 

例によって明らかなまでに暗い空気を纏ってたAでしたが、僕達は椅子に腰掛け同じタイミングでタバコに火を点けました。

 

しばらく無言が続きました。

 

 

そして彼が口を開きました。

 

「今週のワンピース読みました?」

 

僕はそもそもワンピースを読んでいませんでした。

 

「いや、読んでないよ。」

 

「そうっすか、今週めっちゃ熱いんすよ。ソラ島で‥」

彼も彼なりに僕を気遣って言葉を探してくれていたのです。

 

『これ以上激昂した所で仕方ない。』

自分の気持ちを押し殺して終わった事を水に流そうとしてくれているようでした。

それを察すると罪悪感に包まれました。

 

彼は更に言いました。

 

「今日バイト終わったら練習しましょう。」

 

「やろう。」

僕はまた罪悪感に包まれました。

 

 


 

それから僕はたんたんと仕事をしました。

時折Aは空元気で僕に話しかけました。

いつもならうっとおしく思うような彼の発言がなんだかやたらと胸に沁みました。

 

「ちょっと眠いんで休憩入って寝ます。」

深夜1時頃、Aはそう言って僕は了承しました。

 

お店は暇でした。

僕はダラダラ食器洗いをしながら、カウンターに座っている常連のお客さんと話し始めました。

 

 

「ピンポーン」

入店を知らせるベルが鳴り、見るとりょうたを始めとする大学生の常連連中が入店してきました。

 

「ウィッス!遊びに来ました。」

 

「おー。」と声をかけると

その団体の中に一人だけ女の子がいました。

 

ユキでした。

僕は目を疑いました。

僕に会いに来たのかどうかは知りませんが、それでも今この場に彼女がいるとまずい事は明らかです。

ユキだってそのくらい分かるはずです。

それでもここで彼女に話しかけて変な空気にする訳には行きません。

僕は平常心を装いました。

 

 

彼らは適当に席についてワイワイガヤガヤと喋り始めました。 

ユキも僕の心配をよそに楽しそうにはしゃいでいました。

紅一点、男子に囲まれていじられながらもチヤホヤされていました。

微妙な苛立ちと嫉妬心が湧きました。

 

 

 


 

「あー、だりぃー。隼人さんも休憩行きますか?」

休憩から戻って来たAはそんな事を言いながら店内を一瞥しました。

 そして言いました。

 

「えっ、何であいついんの・・・」

 

僕は黙っていました。

少なからず僕に責任はありません。

 

「隼人さん何であいついるんですか?」

そんな事聞かれても僕が知るはずがありません。

 

 「いや、知らんよ。」 

 

 

 

「知らないっておかしいだろ!どうにかしろよ!」

 

Aが声を荒げました。

理不尽にも程があります。

 

 

 「はぁ、バカなのお前!?」

思わずそう反論していました。

 

 

 「来るなって言っとけよ!」

 

Aが僕に詰め寄りました。

  

ユキから送られて来たライン。

りょうたから告げられた話。

僕の頭の中にそれらがよぎりました。

 

 

 

「つーかお前その言葉遣い何だよ。殺すよ。」

 

 今まで我慢してきた言葉がついに口を伝いました。

 

 

 

 「やれるもんならやってみろよ!」

 

 

思わず手が出ました。

 

 

「隼人!やめろ!隼人!」

 

カウンターに座っていたお客さんからかすかにそんな言葉が聞こえましたが、もう止められませんでした。

Aの顔面を思いっきり殴っていました。

その後、当然やり返されて取っ組み合いのケンカになっていました。

気付いたら常連の大学生連中が仲裁に入って僕らの事を抑えつけていました。

 

 

 

 

 


 

「てめーぶっ殺すぞ!こいよ!」

 

 Aは押さえつけられながらにひたすらそんな事を叫んでいました。

 

怒りで一瞬周りの景色が白くなっていました。

止められてからは変に冷静になってしまい、もうケンカしようなんて気持ちは起きませんでした。

 

『めんどくせーこいつ。』

 

 

 「てめーが先に手え出したんだろ!おい!話ししよーぜ!」

 

 

こいつと話す事なんてもう何もないし、話しをする価値のあるような人間ではない事を実感しました。

ふとユキの方を見ると彼女は顔を背けて、ドリンクバーのストローを気まずそうに加えていました。

 

 

「もういいよ、みんなごめん。」

僕がそう言うと仲裁に入っていたみんなは、ぞろぞろとその場を離れて行きました。

当然Aの怒りはまだおさまっていません。

 

 

「おい、話ししよーぜ、来いよ。」

 

Aはそんな事を言いながらバックヤードに引っ込んで行きました。

 

 

 

 

僕は無視をしました。

 

 

 

 

 

新規でお客さんがやって来ました。

 

 

 

「いらっしゃいませー。」

何事も無かったかのように対応しました。

気付いたらユキは帰っていました。

  

 

 

 


 

それから二時間程経ったでしょうか。

 

「隼人さん何があったんですか、大丈夫っすか?」

りょうたや残った常連の大学生達が声をかけて来ました。

 

 「いやーなんだろう、普通にムカついたから殴ったわ笑」

僕はちゃっかり喰らった頭突きで出来たおでこのたんこぶをさすりながら答えました。

 

「何があっても手出すのはダメっすよ。」

「ガキじゃないんだから話し合わなきゃ。」

一斉に避難を受けました。

 

 「まぁ、せやな。」

そう答えながら「うざっ。」と思ったのが本音でした。

 

  


 

明け方になってみんな帰って行きました。

いつの間にかAも帰っていました。

僕はため息を吐きながら、誰もいなくなった店内をなんとなしに巡回しました。

 

いつの間にやったのか【バンドメンバー募集】のフライヤーが全て剥がされていました。

 

 

 「展開早くねー笑」

僕は一人そう突っ込みました。

 

次の日Aはバイトをバックれました。

それから2度と彼に会う事はありませんでした。

 

 

メンヘラちゃん

メンヘラちゃん

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Part.13 へ続く

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