初めて大麻を吸った時

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初めて大麻を吸った時

 

グットトリップだったのか、バットトリップだったのか今考えてもどっちだったのかはよく分からない。

きっかけは友達がくれた事だった。

 

僕は何事も深く考えず行動する性格で、その時も深く考える事はなかった。

大麻をくれた友達と言うと、その友達が良くない友達なんだと思われがちだけど全然そんな事は無い。

真面目だし、派手な遊びをするタイプでもないし、立派な奴だ。

その友達はB-BOYで、ラップをやっていた。

 

そんなこんなで周りの影響とかで吸い始めたんだと思う。

彼が大麻をやっている事は薄々気付いていた。

時々様子がおかしかったり、目が不自然に充血している事があった。

彼と会う時は一緒にジムに行って、サウナに行くのが定番の流れだ。

 

 


  

その日も、一緒にサウナに行くことになっていて、駐車場で待ち合わせた。

 

「今日はサウナに行く前に渡したい物があるんだ」

顔を合わせて早々にそうと言われ

 

「なんだろう。」

と思いながら僕は話しを聞きだした。

 

「たまたま手に入れたからさ」

と言い、彼はジョイントした大麻を吸い出した。

正確に言うと、この時僕は大麻を吸うのは2回目で、1回目は軽くふかしただけだった事もあり何も起きなかった。

それもあり、ためらわず友達から手渡された物を深く吸い込んだ。

深く吸い込むとめちゃくちゃむせる。

肺が痛い。

 

 


  

一服を終えると、何事も無かったようにサウナに向かった。

少し目の前がぼやけ始めた。

はっきり異変に気付いたのは頭を洗っている時だった。

 

流しても流しても泡が無くならない。

かと思ったら、次の瞬間には映像が切り替わって、身体を洗い始めてる。

やたらと時間がスローモーションで流れ始める。

イメージとしてはDVDをチャプターごとに早送りして、戻したり飛ばしたりを繰り返してる感じ。

夢なのか現実なのか分からない。

何を言っているのか分からないかもしれないけど、この感覚は経験者にしか分からないと思う。

 

「あれ顔洗ったっけ?」

身体を洗ったのが遠い昔の事のように思えて、覚えていない。

 

「オレ結構キテるわ!やばいかも笑」

隣で身体を洗っている友達に声をかける。

 

「あれ結構いいネタなんだよ。しかも二人で吸うと思ってガッツリ巻いてきたから!」

友達は鼻歌を歌いながら上機嫌で答えた。


「最悪だよ完全にバットトリップだ。大麻なんて吸わなければ良かった。」

僕は平常なふりをしながら、内心そう思った。

 

 

 


  

身体を洗い終えるのに果てしない時間を要した気がした。

時間が行ったり来たりして、平衡感覚が薄れて気持ち悪くなった。

身体を洗い終わってサウナに入った。

 

感覚が無い。

汗が噴き出してこない。

今すぐ横になりたい。

 

「ちょっとオレ無理だわ!すまん!」

僕はそう告げると、サウナから出て身体も流さず、風呂から出た。

 

 


  

着替えて、休憩所に直行して横になった。

感覚的に泥酔をした時と似ている所もあるけど、全然違う

 

「最悪だよ。大麻なんて吸わなければ良かった。」

時間が全然進まない。

水の中で藻掻いているような。

悪い夢でも見ているような。

 

「もしかしてこの夢は一生覚めないのではないか?」

「いや違う。今まで生きて来た世界が幻でこれが通常なんだ。オレは気付いてしまっただけだ。」

そんな風に意味深な思考が頭を埋め尽くす。

 

時間が行ったり来たりする。

 

すべての景色に既視感があって、涼宮ハルヒエンドレスサマーの回のような感覚になった。

 

「この時間は繰り返してる?」

そんな事に気付いたら次の瞬間別の景色が流れている。

 

「どうにか抜け出さなきゃ、おれは正常なんだ」

悪夢にうなされているような感覚と、冷静になるのを繰り返す。

 

無限に息を吸い込める感覚になる。

 

 

 


  

「うわなんだこれ!」

気付いたら身体がソファーの下に沈み込んでいく感覚になる。

疲れている時に、身体がベッドの中に沈んでいくようなあの感覚だ。

本当にソファーに沈みこんで身体とソファーが一体化しそうになる。

突如としてものすごい快楽に襲われた。

 

と思ったら、次の瞬間記憶が別の所に飛んで冷静になる。

眠りたいのに目がギンギンに冴えている。

身体が重い。

深いリラックスと、気持ち悪さと冷静さが繰り返しやってくる。

身体の感覚が鮮明になる。

頭が痒くて掻いてみると、異常に気持ちいい。

 

「もしかしたら今セックスをしたらめちゃくちゃ気持ちいのではないか?」

 

そんな事を思った。

しかし今相手はいない。

 

「でもこれは夢の中なんだからそこら辺にいる人を襲ってもなんの問題もないんじゃないか?」

 

「いやこれは現実だ。こういう風にして薬物中毒者が性犯罪を起こすんだ。」


と気付いた。

 

オレは冷静だ。

これは現実だ。

これは夢だ。

 

そんな思考が繰り返された。

何百年もの時間を過ごした気がした。

 

 


  

 

友達がやってきた。

 

「大丈夫か~?」

アイスを食べている。

 

「全然平気だよ」

平常を装ったのか、その時は本当に平常だったのか自分でも分からない。

 

「アイスめちゃくちゃ美味いよ」

 

「一口頂戴」

モナカのアイスを食べた瞬間、衝撃を受けた。

甘味がドバドバと口の中に流れ込んくる。

 

「なんだこれ!」

 

「水も飲んでみー」

口に水を含み飲み込むと、乾いた身体に水が浸透していくのが分かる。

指先の血管にまで水が流れていくのが分かった。

 

いわゆるマンチーって奴だ。

圧倒的幸福感

 

「これはグッドトリップだ!」

 

その時はそう思ったけど、またバッドトリップが襲ってくる。

 

「気持ち悪い二度と大麻なんて吸わない」

 

 


  

「マッサージしようぜー」

マッサージは40分3000円。

普段倹約家の友達が、そんな事を言い出すのは珍しい。

 

この時自分が上手く喋れていたのかは覚えていない。

まるで水の中にいるような。

言葉を発そうとすると上手く声がでない。

かと思ったら次の映像では流暢に喋っている。

 

何を言っているのか分からないと思うけど、本当にそんな感覚なのだ。

取り調べなどで薬物中毒者が意味深な事を言う理由がよく分かった気がした。

 

マッサージからは完全にグッドトリップだった。

足つぼマッサージを受けたんだけど、身体中の全神経が足に集まる。

感覚的に足に身体中の全ての神経を集中させる「全集中の呼吸」を使っている感じ。

 

めちゃくちゃ気持ちいい。

圧倒的幸福感だ。

こんな感覚味わった事はない。

 

その瞬間、流れているBGMが身体の奥底に鳴り響いてきた。

ピアノの粒子、一粒一粒の音が身体の奥底に響く。

 

すごい!

とんでもない臨場感!

間近でオーケストラでも聞いているような立体感。

ビートルズや、クイーンのフレディーマーキュリー、世界を代表するミュージシャンが薬物中毒者だった理由が分かった。

 

感覚がとぎすまされるのだ。

僕もずっと音楽をやっていたから、今なら何かとんでもない作品を残せる気がした。

 

 


  

しかし感覚は徐々に薄れていった。

車で家に帰りつけるのか心配だったけど、帰宅時はある程度酔いが冷めていたようで、普通に帰れた。

家に帰ってから、どうしても味が濃いものを食べたくてポテチとビールを買ったんだけど大麻の効果が薄まっていてそれほど感動はしなかった。

ただぼんやりとした浮遊感はずっと残っていて、その日はとても熟睡が出来た。

 

 


  

朝起きてからも、浮遊感が残っていて、そのまま仕事に行った。

いつもなら全然集中出来ない仕事も、その日は、ぼーっとする反面感覚が研ぎ澄まされているような気がしてやたらと集中出来た。

 

 

 


  

その後大麻について色々調べたけど、いいか悪いかなんて賛否両論だ。

人によって飛び方は違うし、バッドになる事もグッドになる事もある。

特に初心者の内は症状が強く出るらしい。

タバコと同じで一度吸っただけで依存するような事は無いと思う。

慣れて来てもっと強いのが欲しいと思った所から依存が始まるんだと思う。

気分が落ちている時は、バッドになり易いので絶対吸わない方がいいと思う。

 

まあ、いずれにせよ日本では非合法なので所持がばれたら捕まってしまうし犯罪だ。

僕は大麻効果でグッドトリップを経験した一方、バッドがあまりにもきつかったので、二度と吸いたいとは思わない。

 

依存してしまったら、生活に確実に支障をきたしそうだ。

 

まあもちろん人によって症状も違うし、海外では合法の国も多いし医療にも使用されているので、否定するつもりもない。

依存してしまったら身体を蝕むし、確実に健康的な物ではない。

何もかもがどうでもよくなったり、楽しい気持ちになったりもするから、辛い事があると大麻に逃げたくなる時もまああると思う。

 

現実逃避したい時にはめちゃくちゃ便利だと思う。

大麻に逃げず自分の現実と向き合うのが大事かな。

 

トレインスポッティングみたいな状況になってからじゃ遅いし笑

 

 

アラサーホストになる【エピソード26 ホストクラブとコロナウイルス】

 

4月に最初に緊急事態宣言が発令され、それからもコロナの影響が長引き、店は更に苦しい状況に陥っていた。

長年勤めていた従業員も殆ど辞めてしまい、残りの従業員は8人くらいしかいなかった。

 

まともに出勤している人はもっと少なくて、僕は週2回くらいしか出勤していなかった。

残ったからと言ってモチベーションを保てる者も少なく、状況は厳しく、たまに出勤しても客は1組、2組しかいなかった。

 

入った当初、ナンバーにに載る為に頑張ってきたけど

この時は月に数回しか客を呼ばなかったけどNo.に載り続けていた。

 

 

コロナによって淘汰されたホストクラブ

 

2021年1月

2度目の緊急事態宣言が発令されて、この時に店が潰れた。

コロナに勝てなかった。

 

ちなみに、コロナの影響でたくさんのホストクラブが潰れた。

無法地帯の歌舞伎町はさておき、立川に3店舗あったうちの2店舗が潰れ、八王子にあった2店舗が潰れた。

もちろん歌舞伎町でもたくさんの店が潰れたらしいけど、新店舗もたくさん出来ていてそれはコロナ以前日常の事だと思う。

 

経営ギリギリの弱小店はコロナによって軒並み淘汰された感じだ。

 

もちろんうちの店は感染対策はバッチリやっていたし、客にもキャストにもコロナは出ていない。

キャストの一人一人が、もっと結果を出せていればこんな事にはならなかった。

20年以上続いた老舗の店に、僕達の代で終止符を打ってしまった事が悔しかった。

 

何だかんだ言っても、ずっと潰れずに持ってきたのだから、これからも続いていくものだと信じていたけど、1年半続いた僕のホスト人生は突如として幕を閉じた。

結局No.1になる夢も叶わなかったし、まともに頑張れたのはコロナになる前までだから1年も無い。

 

No.1だった、mioさんとほむらさんは歌舞伎の有名店に移籍した。

 

「一緒に行こうよ!」

と言われたけど、とりあえずは断った。

色々決断出来ない材料が多い。

二人とも歌舞伎町に行けばすぐ売れると思うし、同業もありだし、今度会いに行きたいと思う。

その後の話しを聞くのが楽しみだ。

 

うちの店は年齢層も高かった事もあり、それ以外の人は水商売を上がると言っていた。

一人はずっと指名してくれていたエースと結婚するみたいな事を言っていたけど、どうだかは分からない。

 

 


   

最後の営業日には、常連客と昔の従業員とかが集まって飲んではしゃいだ。

 

「今までありがとう」

客も従業員も、これまで関わってきた人殆どが意外な事にそう言ってくれたのが嬉しかった。

 

寂しい思いもあるけど、みんなどこかほっとしていたようにも見えた。

 

「ようやく終われる」

そんな感じだったのかもしれない。

 

 

 


  

A子とは、辞めた後も少し付き合ってから別れた。

僕も何だかんだ彼女の事が好きだったけど、関係は徐々になだらかになっていて、意外な事に平和的お別れが出来た。

察するに、他に男が出来たような感じだった。

ホストなのかどうなのかは知らないけど、そんなこんなで僕に冷めてきたいたのかもしれない。

募る所女性っていうのは意外とそういうものなのかもしれない。

 

「もう会うのは辞めよう」

と、言うと「今までありがとう」と言ってくれた。

 

楽しかったで終わらせるのは悔しいけど、ホストを始めて1年半、苦しい事やしんどい事もたくさんあったけど、たくさんの出会いと経験に恵まれて最高に楽しかった。

ここまで頑張ってきた自分を褒めてあげたいと思う。

 

 

最後まで愛読頂き有難うございました。

 

 

---fin---

 

 

 

 

 


  

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アラサーホストになる【エピソード25 自殺未遂をするホス狂い】

 

自殺未遂をするホス狂い

 

コロナの影響が長引き、何かとルールが変わり、思うように結果が出せない日々が続いた。

売り上げも上がらないし、たまに出勤する程度になっていた。

アクセルを踏みたくても踏み切れない状況が続いて、やる気も消失していた。

 

そして何よりA子といるのがしんどくなってきていた。

週に一で遊びに行くのは定番化していて、連絡も常に返さなきゃ怒ってしまうし、映画に集中したり、本を読む時間さえ奪われた。

 

その頃、彼女は体調をくずしていて、仕事にもいってなかったし、完全にニートだった。

そんなんだから、店にも来ていなかったし、僕も呼ぶのも嫌だった。

 

A子はやはり僕がホストをやっている事が気にいらなくなっていて「はやく辞めろ」と言ってきた。

 「今日は客来た?」とか「女と話した?」とか毎日のように聞いてきた。

仕事なのだから女と話すのは当たり前だ。

その度に適当にごまかすのももちろんきつい。

 

そして暇でやる事が無いからか、ホスラブを荒らし始めた。

すぐにA子が書き込んでいる事がバレて、A子が掲示板で叩かれ始めた。

そして更にヒートアップして、A子の書き込みも過激化していた。

 

基本的にホストも客も、みんなホスラブを見ている。

書き込みが元で担当と客が喧嘩になる事なんてよくある。

僕は興味も無いし心底くだらないと思っていたので、見る事も無かったんだけど、先輩が「隼人これは流石にやばいだろ」と書き込みを見せてきたから、その度にうんざりした。

 

からしたら、大営業妨害だ。

 

掲示板で叩かれた。許せない。書き込んだ奴を特定して慰謝料を払わせる」

と訳の分からない事を言い出したかと思えば、本当に弁護士に相談して開示請求をし始めた。

 

「お前が書き込んだからだろ!」

と内心思ったけど、面倒なので何も言わなかった。

 

「あなたがホストを辞めれば、こんな事はしなくていいの。私は傷つかなくていいの」

と脅迫してきた。

 

「流石に限界だ」

と思った。

 

この子とこれ以上関わっていたら、客を増やしようがない、それ所か仕事にならないし、精神的に耐えられない。

そして別れを切り出した。

 

 


  

会って、話しをしたら大変な事になる事が分かっていたから、ラインを送った。

 

「オレはまだホストを頑張りたいし、A子はオレと一緒にいても傷つくだけだから、もう会うのは辞めよう。これ以上一緒にいるのはお互いにとってよくない。」

 

要約すると、こんな感じの文を送って、無視をすると決めた。

 

 

 


  

100件以上電話がかかってきたけど無視をした。

心が痛んだ。

リスカの写真も何枚も送られてきた。

お金も相当使ってもらっていたから、弁護士に訴えるだとか、そんな内容も来た。

 

もう、どうしようも無かった。

友達もいないし、家にも居場所がない、唯一の居場所となっていた僕が突き放してしまったら、どれだけ辛いかは容易に想像できる。

だけど僕には彼女の事を幸せに出来ない。

それが嫌なら離れるしかないと言う事は何度も伝えている。

僕には僕の人生がある。それだけだ。

 

次の日の夜中に遺書が送られてきた。

どれだけスクロールしても下にたどり着かないくらい長文だった。

 

「私が死んだ事を一生後悔すればいいと思います。さようなら。」

最後はそう締めくくられていた。

 

別に本当に死ぬとは思っていなかったけど、彼女の事を嫌いになった訳でもなかったから心が痛んだ。

 

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 結局無視を貫ききれず会いに行ってしまった。

さっきまで、僕に思いつく限りの誹謗と中傷を溶びせてきたのに

 

「あなたがいないと生きていく理由が無いの。一緒にいれないなら死ぬ」

と言った。

 

手首から腕にかけてのリスカ跡と、青白い彼女の顔を見るといたたまれなくなってしまった。

それと同時にどんよりした気持ちと憂鬱が込み上げてきた。

 

「もう逃げられない」

そう思った。

 

結局状況は1mmも変わらなかった。 

 

 

 

ーーーエピソード26へ続くーーー

 

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常にマスクをしているのが当たり前な時代に突入した。

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アラサーホストになる【エピソード24 ホストクラブを去る者】

 

7月

ご存じの通り、緊急事態宣言が解除されコロナの感染者数は一時的に減っただけで、すぐに第二波が来た。

 

歌舞伎町では、ホストクラブでクラスターが発生しまくって、水商売を叩く声が相次いだ。

客足が戻る事なんてあり得ず、飲食業界や水商売業界への打撃は相当な物だった。

歌舞伎町では幾つものホストクラブが潰れて、立川にあるライバル店の一つもこの時期に潰れて、立川にはホストクラブが2店舗だけになった。

 

系列店から数えて20年以上続くうちの店も当然稀に見る危機的状況に陥っていた。

それに加え、辞める従業員も多く、ずっとナンバー1だった、主幹も7月を最後にホストを引退した。

 

まだ、立川の夜の街が盛り上がる頃、毎日のようにシャンパンを浴びて、バースデーやイベント時にはタワーにシャンパンを注ぎ、華やかなホスト人生を送ってきた主幹の最後は質素な物だった。

10年ホストを続けた主幹のラストに、シャンパンコールが響き渡る事は無く、それ所かお系を引く従業員も多く、店内はいつも通り空席が目立った。

午齢も40を超えていたと言う話だし、コロナの影響もあり潮時だと思ったのだろう。

僕自身もそんな主幹の最後の日にシャンパンの一つも入れられず、華やかに送り出せなかった事を悔やんだ。

しかし、それもそれで正しい最後だったのかもしれない。

 

 

 


  

一番仲良くしていたゆうせいさんも8月で辞めた。

彼も40歳目前で思うように結果が出ない事実に、限界を感じていたみたいだ。

ゆうせいさんは店での権力者である先輩方と馬が合わなかったみたいだし、辛い想いも多かったと思う。

売り上げが全てのこの業界で、結果で見返そうと努力してもなるようにしかならない現実はとても辛かったと思う。

多分ゆうせいさんが本音で話せるのは、僕だけだったし「お前がいてくれて楽しかったよ」とよく言ってきた。

僕は他の先輩も皆好きだったけど、ゆうせいさんの事を舐め腐ってる先輩の態度はあまり好きじゃなかった。

だから、ゆうせいさんには結果で他を見返して欲しかった。

バイトの僕でもゆうせいさんよりずっと結果は上だったから

 

「こんな所で終わっていいんすか?もうちょっと頑張りましょうよ!」

と上から目線で葉っぱをかけた。

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と言うより単純に辞めてほしくなかった。

 

「もうやりきったからいいんだよ。」

 

結局ゆうせいさんは最後の月でもお茶を引き続けて、最終日もお茶だった。

悲しい最後だ。

花束も色紙も無ければ、祝福の言葉も当然無い。

しかし厳しい状況を皆で乗り越えて行かなきゃいけない時に、辞める人間に祝福もクソも無いのは当たり前かもしれない。

 

「隼人ありがとうな。辞めてからも飯行こうな」

二人でキャッチをしている時は、よく愚痴を言っていた。

しかし、最後に「一緒に頑張りましょう!」で締め括れ無い人に愚痴を言っても虚しいだけだ。

 

「ゆうせいさんと遊んでる暇なんてないっすよ」

と冷たく一蹴した。

 

辛辣かもしれないし、少し悔しかったけどこれが本音だから仕方ない。

 

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ーーーエピソード25へ続くーーー

 

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ホスホス

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アラサーホストになる【エピソード23 No.3】

5月

僕は丸一か月ホストの仕事を休んだ。

 

4月も2回しか出勤しなかったので、ほぼ2か月休んだ。

会社にも週に2回しか行かなかったし遊びにもそんなに行かなかった。

おかげで信じられないくらい体力が回復して元気になっていた。

コロナ以前は常にギリギリで常にヘトヘトだった。

やはり人間定期的に休んだ方がいい。

何と言うか「もう一度頑張ろう」と、新たな心持になる事が出来ていた。

 

 


  

6月

緊急事態宣言が解除され、営業が通常に戻った。

しかし、1ヶ月休業の赤字のせいで、人件費削減が余儀なくされ、バイトの僕は客を呼べる日以外は出勤を禁じられた。

清々しい気持ちで頑張ろうと思っていたのに肩透かしを食らった気分だ。

しかし、緊急事態宣言が明けたからと言って客足が戻ってくる訳じゃないからそれも仕方ないとは思う。

 

8日は自分のバースデーだった。

ナンバーに入っていた頃は、店側もイベントを打つ気満々だったけど、ナンバーを落として、挙句の果てに5月は1回も出勤せず、代表からの電話もシカトしていたから、見限られたのか自分のバースデーの日すら代表は覚えていなかった。

そもそもコロナの影響で、飛沫防止シートが張られ、どの道イベントを打つと言う事は無かったんだけど。

 

 


  

6月8日

2か月ぶりに僕は出勤した。

 

 

A子には事前にバースデーだからシャンパンを入れてなどのお願いはしていなかった。

言ったらキレられそうだし、それに何というかサプライズをしてくれそうな雰囲気があった。

言われなくてもしようと思っているのに、言われると気分が悪いと思う。

今から宿題をやろうと思っていた矢先「宿題やりなさい!」と母親に言われると、クソほどにムカつくあの時の感情に近い。

 

「幾らくらい行く?シャンパン入れられんの?」

と、裏で代表に圧をかけられたけど

 

「知らないっす」

ぶっきらぼうに答えた。

 

後は彼女に任せるしかない。

 

無理やりシャンパンを煽るのは僕の主義じゃない。

 

 


 

予想は的中!

僕がトイレに行っている間にドンペリが入った!

これまでのホスト人生で一番の高額ボトルだ!

 

それだけドンペリと言うボトルはホストにとって価値のあるボトルだし、名誉の一つだ。

ナンバーを落とした僕にとっても名誉挽回の大きな機会となった。

 

僕は彼女にマジで感謝した。

ここまでの苦痛が実った瞬間でもあったかもしれない。

その日の売り上げだけで僕は一気にナンバー1になって、彼女も喜んでくれた。

それから彼女はしばらく上機嫌で、喧嘩もしなかったし(喧嘩と言っても僕が一方的にディスられるだけだけど)病む事もなかった。

 

ここまで来たら、僕をナンバー1にしたいと言う事で彼女はバースデー以降も何回か来てシャンパンを空けてくれた。

流石に一人だけでの健闘じゃ限界があって、結果僕はナンバー3になった。

締め日にその月のナンバーが決まった時、ナンバー2のmioさんとの差はたった1万円だった。

彼女は悔しがって何故かmioさんにキレていた。

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もちろんコロナで他の人の売り上げが落ちている中だけど、売り上げもナンバーも今までの最高記録となった。

しかしナンバー3と言えども、小計50万円には届かず給料が歩合になる決でも無く、出勤日数も8日だけだったから給料は6万円くらいだった。

総売りで言ったら50万円近く売ったのに、僕の手元に入るのはたったの6万円だ。

 

女性を騙して搾取するのが、一般的なホストクラブのイメージだと思うけど、それ以上にホスト自体が搾取されているのがリアルだと思う。

 

店には当然のように搾取されるし、売り掛けを飛ばれたとしたら客にも搾取される。

後々回収出来たとしても、幾らかは給料から引かれて自腹になる事の方が多い。

例え、ナンバーに入っていたとしても自腹を切りまくってたら、なんの意味も無いと思う。

店側からは「自腹を切ってでも呼べ」とプレッシャーをかけられる。

 

「店の為に」と言う責任感が強いホストは毎月限界まで自腹を切って売り上げを上げる。


常にナンバー上位にいても全然金が無いホストにはそういう側面が多い。

責任感とプライドの為に自腹を切るからだ。

僕はそんな責任感なんの役にも立たないと思うし、ナンバーの為に自腹を切るそんなプライド不要だと思う。

だから、売り掛けは極力しなかったし、代表に圧をかけられても、客を無理に呼ぶことは無かった。

  

「あなたの為に頑張ったの。裏切ったら許さないからね。」

彼女はそう言った。

 

 

 

ーーーエピソード24へ続くーーー

  

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ドンペリ

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アラサーホストになる【エピソード22 究極のメンヘラ】

 

究極のメンヘラ

 

A子とのエピソードで一番しんどかった事がある。

 

出かけて、彼女を車で家に送っている時、着信がなった。

初回で来て連絡先を交換した女の子だった。

連絡先を交換してからは定期的にやりとりをしていたんだけど、その後店に来る見込みが無さそうだったので返信するのを辞めた子だ。

 

何故いきなり電話をかけてきたのかは謎だ。

もちろん出なかったけど、それを見た彼女はやはり発狂した。

 

 


  

 

「誰この女!!!!!!」

 

もう、面倒くさい。

こうなったら手に負えない。

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別に僕からすれば大した事ない話だけど、一度キレたら何を言っても無駄なのだ。 

前回と同様、やはりカミソリをつきつけられて、「死ね死ね!!」 と喚き散らす所まで発展した。

 

 

「落ち着いてよ。ただ電話が来ただけで、なんで殺されなきゃいけないの。」

 

適当に親戚とか言っておけば良かっただろうか。

最初の内は我慢して宥めようとしたけど、一向に引き下がる気配はない。

流石にだるすぎて、カミソリを取り上げて、車の窓から投げ捨てた。

 

 

「ふざけんじゃねぇー!!私の大事なものだぞ!!今すぐ拾ってこい!!!!!」

 

大分意味が分からない。

100均で3本入りのカミソリだ。

どこが大事な物なのだろうか。

 

もうどうでもいいし、帰りたかった。

 

 

「拾ってきたら帰ってくれるの?」

 

 

「いいから拾ってこい!!!!!」

 

 

僕は車のドアを開けて、投げ捨てたカミソリを拾って彼女に渡した。

 

取り上げた時に折れたみたいで使い物にならなそうだった。

 

 

「ふざけるな!!壊してんじゃねえか!!人の物壊すとかゴミだな!!死ね死ね死ね!!!!!!

 

 

もはやキレるポイントの意味が分からない。

自分でも錯乱してるのは分かってるのだろうけど。

 

 

「弁償するから。」

 

 

「今すぐ買ってこい!!早くしろ!!!!!」

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時刻は深夜2時になっていた。

めちゃくちゃ言うにも程がある。

 

その後何度も同じ押し問答を続けた。

 

何度か無理やり彼女を車の外に押し出そうとしたけど、意地でも出てくれなかった。

 

「これ以上帰ってくれないなら警察呼ぶよ」

とも言った。

 

本気で呼ぼうとは思っていなかったけど、警察がこの状況をどうにかしてくれるならもうそれでもいい。

 

まあ、予想通り激高した。

 

 

僕は今まで、女性に暴力をふるうのは何があっても許されないと思っていたし、それをする人を真っ向から否定していた。

しかし状況によっては仕方ないのかなと思った。

この時僕が彼女に手を出していたとしても、一切自分が悪いとは思えない。

もちろん、この時もその後も僕が彼女に手を出す事は一度も無いけど。

 

話しが一生終わらないように思えて気が遠くなった。

トイレに行きたくなった。

 

「オレ、トイレ行きたいからそろそろ行くよ。また今度話そう。」

もちろんこれも無理だ。

結局コンビニまで戻って用を足した。

猛烈にタバコが吸いたかったので、ゆっくりと一服して車に戻った。

 

 

 

 


  

戻ると、彼女は血だらけだった。

白い両手首の数か所から赤い血が噴き出していた。

 

 

「見ろ!全部お前のせいだからな!」

 

僕も本当にどうすればいいか分からなかった。

彼女がとても辛いのは分かるけど、僕にはどうしようもない。

自分だけを見てくれて他の女には一切見向きもしない。

 

自分の為に全てをささげてくれる人を望んでいるのは分かるけど、僕はそれにはなれない。

それは何度も伝えているし、それが納得できないなら離れるしかない事も伝えている。

でも、それも出来ない。

自分の思い通りのままコントロールできなきゃ許せないんだと思う。

 

ただ単に早く帰りたいという思いしかなかった。

 

 

「もう辞めなよ。そういう生き方。オレに何を言ったって、自分が傷つくだけだよ。」

 

 

「黙れ!お前のせいだろ!!お前が私の事をここまで追い込んだんだからな!責任とれ!」

 

 

「責任って・・」

 

 

「今すぐ他の女の連絡先全部消せ!!」 

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彼女は喚いた。

やむを得なかった。

 

ここで断ったら更なる惨事を産む。

それにこの頃、他の客には全然連絡を返して無かったし、店に来てくれる見込みがありそうな人もぼぼいなかった。

個人的に連絡を取りたいと思っている女の人も別にいないし、さほどデメリットは無いと一瞬で判断した。

いざ連絡をとる必要があるとすれば何かしらの方法もある。

 

僕は彼女の目の前でラインの連絡先をブロックして、削除した。

それを見て多少納得したか分からないけど、彼女は我に返った。

 


  

 

「痛い」

そう言って、手首を抑えて泣き出した。

 

コンビニで包帯を買って応急処置をした。

泣き疲れて体力が無くなったであろう頃、ようやく帰ろうとしてくれた。

相当疲れているのか足元がふらついていた。

 

 


  

朝になっていた。

 

「裏切ったら許さないからね」

別れ際に彼女は笑顔でそう言った。

 

 

「分かったよ」

 

 

別に彼女と切れようがどうでもいい。

いくらお金を使ってくれたとして、いくら売り上げが上がったとしてもここまでの精神の負担は耐えがたい。

どちらかと言うとここまで来たら後に引けないと言う思いの方が強かった。

今更彼女の事を放り出す訳にはいかない。

そんな事をしたらどうなるか分かったもんじゃない。

 

もちろん多少の情もある。

何と言うか彼女は全力で生きている気がした。

なりふりかまわない。

空気なんて読まないし、周りの事なんて一切考えない。

100%自分に正直に生きている。

そんな彼女の事が少し眩しくも思えた。

僕にはそんな生き方到底出来たものじゃない。

 

一番危惧していたのは、彼女の中で僕が「裏切り」ととる行動を取った時、彼女が死んでしまわないかと言う事だ。

 

 

 

ーーーエピソード23へ続くーーー

 

 


 

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アラサーホストになる【エピソード21 ホストクラブと緊急事態宣言】

 

ホストクラブと緊急事態宣言

 

4月。

この頃は言うまでも無く新型コロナウイルスが流行し、テレビでから流れてくる情報は専らそればかりだった。

 

真っ先に自粛の対象となったホストクラブは当然煽りを受け、新規の客はほとんど来なくなり、指名の客も遠のいた。

何度も言っているようにホストの売り上げの大部分を占めているのが水商売の女の子なので、同様に煽りを受けている彼女達が稼げなくなったのも大きな要因だ。

 

4月半ばから5月末まで緊急事態宣言が発令され、営業はほぼ停止になった。

 

僕は良くも悪くも会社員なので、収入が無くなる事はなかった。

ただバイトが出来なくなっただけだから大した打撃ではない。

先輩のレギュラーホスト達はただでさえ生活苦な中、休業になり、生活が出来なくなり各々がバイトを始めたり、お客さんから小遣いをもらったりして生活を凌いでいた。

 

会社も週に2回だけの出勤になって久しぶりに時間をもてあました。

 

 

代表からはこの期間でどれだけ客を離さないでいられるかが課題だと念を押された。

ホストを始めてから本当に頑張った。

それこそお金を使う暇も休む間も一切ないまま、かけぬけた気がした。

ここに来てプツンと糸が切れてしまった。

 

僕は休むと決めた。

やりとりをしていた何人かの客にもほとんどラインを返さなくなった。

寝たいだけ寝て、好きな事をしてダラダラ過ごした。

緊急事態宜言が出ていたこの頃には、出かける所もなかったので、それはそれで普通の過ごし方だったのかもしれない。

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A子とだけは連絡を取り合ってちょこちょこ会っていた。

今までは友達感覚で接していたけど、この頃には恋人のような関係になっていて、指名変えをしたいと言うような事は一切なくなっていた。

 

と言うか、休業に入る前に、うるはさんが飛んだのでそもそもの話しではあった。

友達営業のままでいたかったのに、雰囲気的に彼女がそう言う物を求めていないのを察した。

このままで行くのは無理そうだと思ったので、僕も切り替えた感じだ。

 

いわゆる「本名営業」って奴だ。

ホストの営業方法は何種類かあって、代表的なので言えば「色恋営業」とか「枕営業」とか「友達営業」とか笑

本命営業は客兼、恋人見たいな感じだ。

まあ、この辺は追々別の記事で説明したいと思う。

 

当然、そう言う関係な訳だから嫉妬が剥き出しになっていて日に日に束縛も激しくなっていた。

 

水商売の店には大体裏サイトがあって、ホストにもホスラブと言う掲示板がある。

何故こんなサイトが産まれたのかは分からないけど、ホストからしたら本当に営業妨害にしかならない邪魔な掲示板だ。

まあ、どこの店もそうだと思うんだけど、うちの掲示板は専らホストと客の悪口で溢れていた。

あいつはブスとか、つまらないとか、誰とでも寝るとか、セックスが下手とか。

誰が書いているのか知らないけど、本当に見ていて気分が悪くなるものばかりだ。

そんな掲示板に書き込んでいる人はよっぽど可哀そうな人だと思う。

 

当然僕の事もちょくちょく書き込んであって、よく言われていたのが、「あいつは宗教」とか「スピリチュアル系の頭おかしい奴」とか意味が分からないものだ。

まあ、そんな事はどうでもいいんだけど、「隼人にこんな営業された」とかも書いてあった。

 

「こんな事が書いてあった」

とホスラブのスクショをA子は送ってきた。

別に僕からすれば気に留めるほどの事でもなかったんだけど、彼女は何を言ってもどんどん激高して最終的にはリスカをするから、そうさせないためにも嘘をつくしかなくなっていった。

 

ウソをつくやつはクズ見たいな風潮があるけど、嘘をつかせる方にも問題があると思う。

ウソをつかざる得ない状況まで追い込ませるのが悪い。

 

ようは他の女と少しでも関わるのが許せない訳だ。

そんなのホストじゃなくても厳しい。

 

まあ、ここまで読んで頂いた人の大半が僕の事をクズだと思っているだろうし、それを否定するつもりは一切ない。

僕はクズだし、自分の不徳の一切を棚に上げた上でこの記事を書くと決めた。

 

 

 

 

ーーーエピソード22へ続くーーー

 

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アラサーホストになる【エピソード20 ホストクラブのヤバイ客】

 

ホストクラブのヤバイ客

 

A子は定期的に店に通うようになっていた。

 

この頃、歌舞伎の出張ホストとは関係が破綻していて、その愚痴を聞くのが専ら僕の役目だった。

愚痴が出るのはもちろん好きだからこそで、ようは好きな人が他の女と関係を持つのが許せないと言う訳だ。

 

「他の女の乳首をべろべろなめてる男なんてきもちわりい!」

とディスっていた。

 

何と言うか元も子も無い意見だ。

その人はそういう仕事をしているのだから仕方ない。

それを承知の上でサービスを受けたのに、好きになったら自分だけのものにならないと気が済まないのだ。

思い通りにならなければ、落ち込んで誹謗中傷して、最終的には恨みと言う感情に変わる。

出張ホストも気の毒だ。

 

それに、自分が風俗という商売をしている事を一切棚に上げた意見だった。

彼女はよく自分の一切の事を棚にあげて他人を批評した。

他の女と連絡を取るのは許さないし、AVを見るのもダメ、極めつけは女性アーティストの曲を聴くのも許さないという事だった。

その割に彼女は、歌い手のまふまふさんの大ファンだった。

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当然出張ホストとは上手くいかず、落ち込んでいる時に慰めたのが僕だった。

僕はどこにも居場所の無い彼女の居場所を作ろうと、なるべく彼女の事を楽しませるように努めた。

いわゆる友達営業スタイルで行くと決めたのだ。

 

僕以外にも、仲のいい従業員を作って欲しくてヘルプのホストにも積極的に絡んでもらった。

ただ、これが微妙に間違いだった。

と、言うのも、彼女がヘルプのホストの事を好きになってしまったのだ。

 

意外にもこういう事はよくある。

 

 

空気が読めないホスト

 

彼女が好きになったのは全く売れていない先輩のうるはさんだった。

 

うちの店では、一定の売り上げを売らなければ名札をつけなければいけないルールがあって、新人であればまずは名札を外すことを目標に頑張る。

僕は入店3ヶ月で名札組を卒業したけど、彼は2年経っても名札を外せない、言ってしまえば店のお荷物ホストだった。

レギュラーで毎日出勤しているのに、いつまでも名札を付けているのはうるはさんだけだった。

当然そんなんだから店での肩身も狭くて、毎日のように代表や幹部に怒られ、後輩からもなめられ、挙句客からも嫌われていて、ほとんどの席でNGをもらっていたので、ヘルプにすらつけない有様だった。

おしゃべりでうるさい人だったから、ごく少数の人には好かれてはいたけど、圧倒的に空気が読めない人だった。

そんなうるはさんがいたたまれない所もあって、A子の席にヘルプでついてもらったのが事の発端だった。

 

二人は思いの他気が合って A子はうるはさんとだけは楽しそうにおしゃべりしていた。

うるはさんも久しぶりにヘルプでつける席があって嬉しかったのか、本当に楽しそうにA子と喋っていた。

まあ、僕には分からない世界だけどとりあえず仲のいいヘルプが出来てよかった。

と安心していた。

 

しかし、違った・・・

僕が全く会話に入れない・・・

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本来ヘルプは、常に空気を読んでその場を盛り上げなければいけない。

客はもちろん、担当ホストの事も立てて、 二人の関係を良好にする役目も課されている。

しかし、うるはさんは自分が楽しくなってしまったあまり、僕の事を置いてきぼりにしたのだ。

 

A子うるはさんに担当を変えたいと言い出した。

前にも触れた事があるけど、ホストクラブは基本的に永久指名制で、一度担当を決めたら途中で変える事は出来ない。

ヘルプのホストとは連絡先を交換するのも禁止だし、担当抜きで外で会うのも当然禁止だ。

それを知るや否や、彼女は急に泣きだしだ。

 

 

ホストクラブのヤバイ客

 

「どうしたの?大丈夫?」

 

 

「自分で考えろ!!」

 

あまりにもいきなりだったので動揺した。

 

「うるはさんに指名を変えられないのが嫌なの?」

 

「お前が指名になってるせいで、あの人と遊びにいけない!ふざけるな!」

 

「そしたら、担当はオレのままでうるはさんに会いに来るしかないよ。」

 

「そんなの辛いだけだろ!今すぐ辞めろ!お前が辞めれば指名変えられるんだろ!だったら今すぐ辞めろ!」

 

なんていう自己中心さなんだろうか。

普通に信じられなかった。

 

「それは出来ないよ。」

 

「じゃあ、どうすればいいんだよ!どう責任とってくれるんだよ!」

 

「責任って、、オレにはどうしようも出来ないよ」

 

「お前それでもホストかよ!客の事を一番に考えろよ!指名変えられないとしたらお前には何ができんだよ!私の為に何をしてくれんだよ!」

 

今まで色んな仕事をしてきたけど、正直ここまでのクレーマーは見た事が無かった。

スカッとジャパンに出てくる悪質クレーマーでもこのレベルは出てきていないと思う。

ここで反論しても火に油を注ぐ事は分かっている。

何を言っても無駄な人ってたくさんいる。

 

「何って、、オレだってA子の事を楽しませるように一生懸命頭張ってるつもりだよ。」

 

「私は全然楽しくない!うるはさんと喋ってる時だけ楽しいの!お前は顔も気持ち悪いし、性格もうざいし、私の事傷つけるだけでストレスにしかなってない!」

 

 

マジか、こいつ・・・

 

僕がいつ彼女の事を傷つけたかなんて謎だった。

少なくとも言葉のナイフで僕の事を滅多刺しにしているのはそっちだ。

流石にキレそうだった。

 

うるはさんは、遠くの方で僕たちの様子を見つめてた。

他の客も、別の卓にいたホストも様子が気になるのか、ちらちらこちらを見ているようだった。

 

 

 


 

会話は堂々巡りだった。

何度同じ事を言っても、人の意見を聞くような子では無い。

その後同じ押し問答を繰り返した結果、我慢できずに僕はキレてしまった。

と、言うか強引にでも帰ってもらわないと、一生終わらない気がしたのだ。

 

「もういいよ!お前帰れ!」

急に口調を変えた僕に驚いたのか、彼女は一瞬目をまるくしたけど、すぐに反撃に出た。

 

「ふざけるな!私は客だぞ!!」

流石に話しにならないと思った。

 

「お前なんて客でもない!金は払わなくていいから帰れ!それでもう終わり!うるはさんともオレとも会うことはないからじゃあね。」

そう言って、伝票をとって会計を済ませようとした。

 

その瞬間、彼女はポーチからカミソリを取り出して僕の首元につきつけて喚き始めた。

 

 

 


 

 

「死ね!死ね!死ね!今すぐ死ね!!!!」

 

流石にダルすぎだ。

世の中にこんなダルい事があるだろうか。

 

「切りたいなら切ればいいよ。別にそんな事されても怖くないよ。」

僕はあきれた感じで言った。

 

 

「私の事舐めるなよ!元カレの事も本当に殺しかけたんだからな!」

 

この話しは以前から何度も聞いていた。

同棲していた元カレと喧嘩の挙句、彼女は元カレの首をしめて半殺しにして2週間ほど警察のお世話になったらしい。

 

 

「キレた時の私の力をなめるなよ!お前なんか簡単に殺せるんだからな!!」

 

 

 

(スーパーサイヤ人かよ!)

 

心の中でつっこんだ。

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そのあとも喚き散らした挙句、今度は自分の手首にかみそりをあてて本当に手首を切り出した。

もともと彼女の手首には無数のリストカットの跡がある。

 

 

「お前の目の前で今すぐ死んでやる!全部お前のせいだからな!遺書にお前のせいだって全部書くからな!」

 

マジでダルすぎる。

今までの人生で出会った人の中でぶっちぎりで一番ダルい。

絶対にそこまで言われるような事を僕はしていない。

 

彼女の手首から赤い血が滲んだ。

流石に宥めるしかなかった。

とりあえず謝って手首を切らないようにお願いした。

 

「A子が手首を切ったらオレも悲しいから、ごめんね。」

そう言って彼女の手首を握ってふさいだ。

 

彼女はそのまま泣き出した。

そして10分くらいして急に真顔に戻った。



 

 


  

「あれ、私なんの話ししてたんだっけ?」

「急に記憶が飛んだ。たまにあるんだよね。

意味深な事を言った。

 

もしかして多重人格症とかなのだろうか。

それとも演技なのだろうか。

よく分からないけど、その後彼女は怒っていなくて全く別の話しをベラベラと喋りだした。

 

僕はとりあえず猛烈にタバコが吸いたかった。

 

帰宅する時、彼女は一切怒ってなくて、手を振る僕達に笑顔で手を振り返してきた。

流石に意味が分からなかった。

 

 

 

ーーーエピソード21へ続くーーー

 

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イベントの時

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アラサーホストになる【エピソード19 ホストクラブに来る子】

 

ホストクラブに来る子

 

それからA子とは、毎日連絡を取って、店に来るようになった。

内容は、ほぼほぼ愚痴とどうでもいい事だった。

 

彼女が僕に好意があるようには一切見えなかったけど、ラインはいつもすぐに返ってきた。

 

初めて店に来た時、相変わらず鏡を手放さず、ヘルプに付くホストをディスるだけディスってただけなのに「結構楽しいんだね」とラインが来た。

 

「あれのどこが楽しかったのだろうか」

疑問だった。

 

結局彼女はうちの店の従業員は「全員ブス」と言う烙印を押して帰って行った。


初回指名は2時間で3700円だから「ホストって安いんだね」と驚いてた。

トップ風俗嬢の彼女の月収は19歳にして3桁を超えていた。

 

何万円もする化粧品を大量に持っていたし、何十万もするブランドのカバンもたくさん持っていた。

 

何が皮肉かって、A子はN子の半分以下の勤務時間で、N子の3倍以上稼いでいた事だ。

 

女性としての価値が、収入に100%直結する風俗と言う商売。

現実は残酷だ。

 

10代でそれだけの金を手にしたからなのか、それとも育った環境のせいなのか、彼女は驚くほど横暴で世間知らずだった。

 

「少な!26歳でしそれしか稼げないのダサwwうちなら一週間で稼げる!ww」

聞かれたので僕の収入を答えたらそんな風にディスられた事がある。

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しかし、彼女が持っているのはお金だけだった。

彼女は孤独だった。

そんな性格だから当然友達なんているはずない。

なんなら学生時代は派手にイジメられていたらしく、高校を中退していた。

過去に付き合った男全員の事を憎んでいたし、 家庭環境も複雑だった。

 

もちろん自身の性格に大きな問題があるのは言うまでもないけど、明らかに生きて来た環境が悪すぎた。

一度はスカウトされてアイドルの道を志したものの、結局メンバーや社長と馬が合わなかったのなんのと言って辞めてしまい、行きついたのが風俗だった。

親は離婚していて、今は母親とその彼氏と暮らしているらしく、その彼氏の事が嫌いで僕によく懸痴ってきた。

 

ちょっとこの辺は情報量が多すぎて上手くまとめられそうもない。

とりあえず、彼女は孤独だったって事だ。


僕はホストクラブと言う場所をそんな彼女の居場所にしてあげられればいいなと、思っていた。

 

 

 

ーーーエピソード20へ続くーーー

  

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仲が良かった後輩と。

一緒に配信をしたり、youtubeをやったりしていたけどすぐに辞めてしまった。

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アラサーホストになる【エピソード18 ぴえん系】

 

ぴえん系

 

連日キャッチに出ていると、ホストに来そうな感じの人と、そうでない人の見分けがつくようになる。

あとは水商売の女の子と、そうでない女の子の見分けもなんとなくつくようになってくる。

ホストに通う客の大半は水商売の子だから、ターゲットは専ら水商売っぽい子だ。

 

そんな風にキャッチをする中一人の女の子に声をかけた。

 

名前は「A子」って事にしとく。

 

見た目は当時の流行語で言うと、いかにもな感じの「ぴえん系」

ぴえん系が何か分からない人は、ググってくれ笑

 

 

彼女が目の前を通った時なんとなくビビッと来て、反射的に声をかけていた。

 

服装はぴえん系だから、全然タイプじゃないんだけど、顔はめちゃくちゃ整っていてアイドルでも通用するくらいだと思った。

 

ただ性格はどぎつかった。

 

てっきりふわふわした感じの子かと思ったら、返ってきた第一声が低めの声で「なにお前?」だった。

 

それでも立ち止まってくれたのだから、話す気はあるのだろうと思って話した。

 

「なにお前?スカウト?」

 

「あ、こう見えて一応ホストをやっているんですよね笑」

 

「ウケるその顔でホストwwww」

 

「一応先月ナンバー6だったんすけどね笑」

 

「ウケる周りどんだけブスなんだよwww普通にブスじゃんwwwww」

 

 

(火の玉ストレート!!上等じゃねえか!笑)

 

 

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冒頭から、ディスられまくったけど、不思議とさほどムカつきはしなかった。

多分この仕事を始めてからディスられる事に対しての耐久性がついてきたこともあるけど。

 

僕を批判しまくってくるくせに不思議とその場から離れようとしない。

余程暇なのだろうか。

 

聞いてもないのに自分の事をベラベラ喋ってきた。

簡潔に彼女の事を説明すると彼女は立川のデリヘルで働いていて、店でナンバー1。

実際に元アイドルで、年齢は19歳。

歌舞伎の出張ホストに通っている。


出張ホストとは、簡単に言えば女性版風俗の事だ。

ただ、この頃、担当の出張ホストとは関係が上手く行っていないらしい。

 

立川にホストがある事は知らなかったらしい。

散々ディスって来たけど、ラインを聞いたら、普通に教えてくれた。

 

「今日自撮り盛れたから送ってあげる」

彼女はそう言うと、いきなり大量の自撮りを送ってきた。

 

全然意味が分からなかった。

 

変な子だな。

と思った。

 

 

「ここで話していてもあれだし、良かったらお茶でも飲まない?」

 

いきなり店に誘うのもあれだと思ったので、喫茶店で話しをする事にした。

 

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鏡依存症の子

 

席につくや否や、彼女は前髪が崩れたと言ってMCMのカバンからピンク色の手鏡をとりだして、しきりに前髪を直し始めた。

 

それから、ヘアアイロンや、リップなど、バサバサとメイク用品を大量に広げてメイクを直し始めた。

最初だけ気になったから直すのかなと思ったら、彼女は最後まで僕の目はほとんど見ず、鏡で自分の顔を眺めながら話し続けた。

 

もちろん、目の前の僕に興味が無いという理由も少なからずあるのだろうけどこれは鏡依存だ。

恐らく醜形恐怖症と言う奴だろうと思った。

 

極度な自己背定感の低さから、自分の外見にどこかおかしな所が無いかと、常に気になってしまう強迫性障害の一種だ。

実際に彼女は奇麗だし、傍からみればおかしな所なんて一つもない。

強いて言うならばずっと鏡を見ているのがおかしい。

 

整形依存症で、何度も整形を繰り返して不気味な顔になってしまっている人をテレビ等で見た事があると思う。

代表的な例で言えば一時期話題になった扇風機おばさん

自分の外見が気になるあまり、整形を繰り返し、整形をしないと落ち着かなくる。

扇風機おばさんの場合シリコンを注射するお金が無くなって、自らで顔に調理用油を注射し、その結果顔面が扇風機のように腫れ上がってメディアから注目を浴びてしまった。

 

これはあまりにも短絡的な例なんだけど、醜形恐怖症の成れの果てと言った所だろうか。

扇風機おばさんの死因は自殺ではないけど、醜形恐怖症の人の自殺率は正常の人の45倍にあたると言われている。

まあ、もちろん思春期から、20代前半にかけて、自己肯定感が保てず、一時的に症状が発生し、気づいたら治ってると言うケースがほとんどなんだろうけど、A子は結構度が過ぎていた。

 

 


 

「いつまで鏡を見ているの?」

 

等とは、聞いていけない。

彼女が鏡を見続けている事には一切触れず、話しをした。

 

ありとあらゆる事に不満があるらしい彼女は、僕にあらゆる事を愚痴ってきた。

丁度ストレスがたまっていて、誰かにぶつけたかったのかもしれない。

そんな時に僕が現れた訳だ。

 

家族の事や、コンビニの店員、はたまた道ですれ違って肩がぶつかったおじさんの事まで。

彼女は鏡をのぞき込んだまま、 早口でそれらの人の事を罵った。

 

「この子は生きるのが大変だろうな」

そんな風に思いながら、僕は帳尻を合わせて相槌を打った。

 

「仕事は大変?」

と、聞くと、彼女は鏡から目を離して言った。

 

 

「てか、今日来たジジイがマジキモかった!70歳超えたジジイのくせに、ちくび噛んでとか言ってくるしマジ気持ちわりい!病んだ!泣きそう!」

 

周りの席の人達が明らかにこっちを見ていた。

 

少し声が大きいなと思ったけど、我慢して

 

「それはキモいね。」

と、相槌を打った。

 

これが彼女との出会いだった。

 

 

 

ーーーエピソード19へ続くーーー 

 

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いつかのイベントの時の僕

これはひどい

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アラサーホストになる【エピソード17 ホストはストレスがすごい】

 

この頃、フォロワーも増えてきて、twitterで営業をかけるようになっていた。

営業をかけると言っても、まずは当たり障りない感じでDMを送って、やりとりをする。

ある程度大丈夫そうだなと思ったら、営業をかけて見たり、外で会って見たりするって感じだ。

 

やはり歌舞伎町のホスト界隈のSNSは盛り上がっていて、札束とか、何百万円使ったみたいな伝票の写真をアップしているホス狂いもたくさんいて、僕もそういう人に積極的にDMを送ってみた。

 

その中で一人、指名をもらう事にも成功した。

ただこの客がとんでもない面倒くさい人だった。

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ホストはストレスがすごい

 

本当にどうしようもない人っている。

特にホストに通っているようなお客さんは非常に申し訳ないけど、救いようが無いほどどうしようもない人が多い。

 

このTwitterで知り合った客も、本当にどうしようもなかった。

年齢は42歳って言っていたけど、会話のほとんどが悪口と不平不満。

ヒステリックで、嫌味っぽくてすぐキレる。

 

常に自分が正しいと思っていて、上手く行かない出来事を毎回他人のせいにしていた。

20代前半でそれならまだ分かるけど、40代でそれだと本当にどうしようもない。

 

今まで指名していたホストの事もボロクソに言っていて、専らそれらの愚痴を聞くのが僕の役目だったんだけど、段々僕に当たるようになって来た。

更に色恋を求めて来て、ラインの返信も遅くなるとキレるし、ストレスがえぐかった。

 

極めつけには、第六トーアビルから飛び降りようとして担当に捕まってSNSで拡散された事があって、歌舞伎町では自称有名人だった。

僕もそのニュースは知っていたから驚いた。

 

第六トーアビルとは、ホス狂いが何人も自殺した歌舞伎町では有名な自殺スポットだ。

tokyowise.jp

 

何度も言うけど、20代でそれなら仕方ないけど40代でそれだとどうしようもない。

もちろん内心そんな風に思っていたのは、悟られるはずもないけど。

 

ただ、歌舞伎では毎月100万円以上使っていて、タワーもした事があると言っていて、これを勝ち取ればNo.1だと信じ、ストレスに耐えていた。

ただ、やっぱり立川のホストは歌舞伎と比べて全然盛り上がっていないし、つまらないとの事で散々ディスられた。

ムカついたけど、それは事実だから仕方ない。

これは本当に何回も言われた。

 

 


 

ルイ13世を入れてもらう約束をして、ディズニーに行った。

知っている人も多いと思うけどホストクラブでは定番の超高級ボトルだ。

一撃で200万オーバー。

これを勝ち取れば、立川では余裕でナンバー1だ。

 

そんな事もありこの月は自分がNo.1だと確信していた。

 

ただ、完全に足下を救われた。

 

 

客が妊娠した

 

ディズニーに行った帰り、「帰りたくない」と言われ、ホテルに泊まった。

当然帰りたかったけどそんな素振りは一切見せなかった。

言うまでも無く、もちろんルイの為だ。

 

早めに寝たふりをしてやり過ごそうとしたけど、なんと言うかやはりそう言うモードになられた。

 

「一緒に泊まったからって言って、SEXがしたい訳じゃない男はみんな勘違いしててキモイ」

みたいな事を言っていた事があって、だからこそ泊まるのを了承したのに。

 

しかしそれもこれもルイの為。

電気も消して部屋は真っ暗だし僕は覚悟を決めた。

 

 


 

 ただ、一度そう言う関係になったからか非常に面倒になった。

 

「私達の関係って何なの?あなたは付き合っても無い人とSEXするの?」

 

からしたら完全に「は?」って言う感じだった。

 

そんな感じでそれから色々あって、ルイの話しもうやむやにされた。

もう本当にストレスがえぐすぎた。

 

挙句の果てには「妊娠したかもしれない」と言われた。

 

流石にふざけてる。

って言うのも避妊はもちろんしてるし、そもそもその時イってなかった。

イった振りをしてやり過ごしたからだ。

 

「あなたの子供以外考えられないの」

その客は風俗もしてたし、流石に意味が分からなくて、超適当に返してたら、散々ディスられてもう限界だと思って無視をした。

 

 

 


 

それから数週間して、「中絶手術をした。」

と言われて金を請求された。

 

「いくらかかったの?明細送って」

と言ったら、「全部捨てた。」と言われた。

 

流石にここまで頭のおかしい人は手に負えない。

ラインをブロックしたら、SNSを荒らされた。

 

こんな客を相手にして大金を使わせる歌舞伎のホストはすごいなと思った。

僕には無理だった。

 

ホストは悪い奴が多いけど、客も変な奴が多い。被害妄想家のクレーマーみたいなのは本当に多い。

よくSNSでホストが晒されて叩かれているのを見るけど、晒している方がある事ない事書いているだけの事が多いと思う。

 

ホストはストレスがすごい。

 

 

 

 ーーーエピソード18へ続くーーー

 

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アラサーホストになる【エピソード16 夜の世界は出入りが激しい】

 

ナンバーを落とした僕は、それまでデカい顔をしていたけど急に肩身が狭くなった。

細客が数人残っていたけどほとんどがお茶だった。

 

それに加え、この時期多くの従業員が辞めてしまい、店はどんどん盛り下がっていた。

夜の世界、特にホストは入れ替わりの多い世界だから、これは致し方ない。

 

 

夜の世界は出入りが激しい

 

ホストの世界は出入りがかなり激しい。

気張って始めて見たはいいけど、全然客と喋れなかったり、従業員と馴染めなかったり、全く客を呼べず、ほとんど給料がもらえなかったりという現実を突きつけられて、すぐ辞めていく人がほとんどだ。

 

体験入店に来る子は、意外な事に人見知りな感じの子が多く、見た目もパッとしない子が多い。

やはりどこかしら自分を変えたいと言う願望が強い子が多いのだと思う。

 

根っから陽キャみたいな人はそもそも、ホストなんて始めない人のほうが多いと思う。

レールを踏み外してなければ、普通に大学に入って普通に企業に就職して順風満帆にやっていくと思う。

  

うちの店のレベルで言うと、一年以上続ける人は10人に1人もいなかった。

その中で結果を出せる人なんてもっと少ない訳だからこの世界で勝ち上がれる人は本当に一握りだ。

 

実際に僕が入店した後何人も新人が入店したけど、1年後にはまた僕が一番の後輩になっていた。

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売れないホストはかなり辛い

 

売れないホストはかなり辛い。

客を呼べなければ給料もほとんどもらえないし、何より肩身が狭い。

売り上げ至上主義のこの世界で、後から入ってくる後輩に売り上げを抜かされれば立場が無いし、プライドが傷つく。

2年近く働いているのに、1ヶ月で一回も客を呼べない先輩だっていた。

 

ある程度喋れて客を呼べても、歩合に乗せない限り給料は少ない。

レギュラーである程度客を呼べていた先輩もこの期間で数人辞めてしまい、それもあって余計自分にかかるプレッシャーは大きくなっていた。

 

店が暇な日が続き、必然的にキャッチに出る事が多くなった。

だからと言って、客を呼べてない人全員がキャッチに出させられる訳では無く、自主性だった。

声をかけるのが苦手で、キャッチに出たがらない先輩が多かった。

僕からすれば、暇だと代表の機嫌が悪いし、店はピリピリしてるし、そんな店内にいるのが嫌だった。

知らない人に声をかけるのも別に苦じゃないから、積極的にキャッチに出た。

  

専らキャッチ隊だったのが、僕と先輩のゆうせいさんだった。

ゆうせいさんはキャッチの達人で、店で一番キャッチが上手かった。

僕はこの人の事が結構好きで、かなり仲良くしていたから、ここでゆうせいさんの事に少し触れておこうと思う。

 

 

アラフォーでホストになる,おじホスト

 

まず驚くべきはゆうせいさんの年齢。

39歳だった。

細くて背が高くてイケメンだしメイクもしてるから、ぱっと見そんな風には全然見えないけど、近くで見るとやはり年齢がかくせてない。

 

若さが一つの武器になるこの世界では年齢を重ねれば重ねるほど、状況が厳しくなるから大きなハンデだったと思う。

しかしもちろん人生経験を積めば積むほど、人として魅力が出てきてアドバンテージにもなる。

 

ホストを始めたのも35歳の時で、19歳の子供がいた。

お互いサッカーが好きだったからサッカーの話しでよく盛り上がった。

店では一番年長者だったけど、立場は下っ端の掃除組だったから、年下の先輩にいびられたりもしていた。

 

一度幹部のみおさんに、めちゃくちゃに飲まされて、売り上げが低い事を詰められて

 

「俺だって一生懸命やってんだろ!」

と、思いっきり号泣していた事があった。

 

その時僕は傍からその光景を見ていたんだけど、大人になってから結果が出せなくて悔しくて号泣する世界なんてそうそうないから。

 

「面白い世界だ」

とそんな事を考えていた。

 

それでも前向きにひた向きに仕事に向き合ってナンバー1を目指しているゆうせいさんが僕は好きだった。

 

何より現実を変えようと、必死にもがいている人が好きだ。

営業後や、営業前にも一人でキャッチをして、誰よりも客と真剣に向き合っていたけど、中々結果がついてこないのが残念だった。

 

売り上げは低かったけど、キャッチは上手くて、キャッチから新規の客を連れてくるのは一番多かった。

 

僕は彼にくっついてキャッチに明け幕れた。

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 ーーーエピソード17へ続くーーー

 

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キャッチ中のゆうせいさんと僕

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アラサーホストになる【エピソード15 結婚詐欺をするホスト】

ホストは客の奪い合い

 

2月ナンバーを落とした。

このままとんとん拍子で客が増え続けて、売り上げを上げ続けるものだと思っていたからショックだった。

って言うのもN子が来なくなったのだ。

理由は簡単だ。

他のホストに行ったのだ。

 

立川にホストクラブは3店舗しかない。

客自体も少なく、少ない牌を3店舗で奪い合っている具合だ。

うちの店に通っている客も他店舗に行ったことがある人が多く、必然的に情報も入ってくる。

キャッチをする時など、街で顔を合わせる事もよくあり、必然的に顔見知りにもなる。

ライバルの悪い情報を流して、自分の客にしようとする他店舗潰しもよくある。

 

彼女はライバル店のキャッチで捕まって、最初は他店舗に担当がいるからと断ったものの、流され易い性格だから初回だけならと、キャッチで捕まり、そのまま乗せられて指名をして、アフターに行ってその担当に僕の事を相談して、悪い情報を流されたという感じだ。

彼氏の事を相談して、その相談相手の事を好きになってしまうと言う、まあよくあるケースに近い。

 

しかし、どれだけ堂々巡りなのだろうか。

そっちに行き初めてからラインもSNSも全てブロックされてパタリと連絡が来なくなった。

恐もくそちらの担当にブロックされたのだろうけど、女性は何というか曲がり角を曲がってから立ち去るのが早いものだ。

 

代表や先輩にその事を話すと、「意地でも取り返せ」と言われたけど、正直僕はホッとしていた。

彼女の相手をするのに疲れていた。

どんな時でも2秒以内に返ってくるラインには苛立ったし、内容は毎回同じだ。

正直顔を見るだけで憂鬱になっていた。そしてもう一つホッとしていた理由がある。

相手都合で終わったのであれば、あとくされなくサヨナラ出来るからだ。

 

例えば、他の女の子とホテルに入る所が目撃されたとか、ホストは辞めるからもうサヨナラとか、そんな風に恨みを買う終わり方をすれば、後々面倒臭い。

 

「これだけあなたの為に時間とお金を費やしたのにそりゃないでしょ」

って言う話しになるからだ。

 

相手都合であれば、傷つけずお別れが出来る。

他店舗に行かれた悔しさより、ここまで僕をナンバーに入れてくれた事に対する感謝の方が強かった。

代表や先輩には「お前の管理が甘いからだぞ」と説教されたけど、そもそも僕は客の行動を縛るとかは、まっぴらごめんだ。

そんな面倒な事したくない。

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ホストは楽じゃない。

はっきり言ってめちゃくちゃきつい。

 

客を呼べなければ、給料をもらえず店で肩身の狭い思いをしてそれは辛いのだが、売れれば売れるほどそれとは違ったしんどさがつきまとう。

どっちが辛いかといったら圧倒的に後者だ。

 

 

売掛で縛るホスト

 

一つ気がかりだったのが、彼女が行ったライバル店は何かと黒い噂が立っていた事だ。

客には消費者全融で借金をさせてでも、シャンパンを入れさせ売り掛けで客を縛る「掛け縛り」を主流としていると聞いた。

 

一度客に売り掛けをさせ、その掛けを返させる為に店に呼び、また掛けをさせそれを無限にループさせ、店に呼び続けるという方法だ。

他店潰しも平気でやるし、僕が働いていた店より何かとルールが厳しいとも聞いていた。

案の定N子は、掛けで縛られ続けうちに来ていた時より生活が困窮していた。

 

 

 

ホストは嘘をつくのが仕事

 

そんな状況でも店に行き続ける理由は結婚営業を持ちかけられたからだ。

 

「ホストを引退したら結婚しよう。それまでオレの売り上げを支えてくれ」

と言われ、まんまとそれを信じた。

 

周りから見れば、それがどれだけおかしい事かなんて一目瞭然だけど、当事者って言うのは周りが見えなくなって頭がおかしくなっているものだ。

ホストに通っているお客さんはそんな人が多い。

 

ホストなんて当たり前のように嘘をつく生き物だ。

それが仕事だ。

なんなら自分の嘘に耐える事が僕達の一番の仕事だとさえ思う。

 

しかし、これはれっきとした婚約訴訟だ。

度が過ぎてると思った。

 

普通に考えたらありえない事だけど、この業界では当たり前にそんな事が行われる。

 

慣れというのは怖い。

本来どれだけ心の優しい人でも、その世界の水に慣れてそれがデフォルトになってしまえば簡単に人を騙す事が出来るのだ。

 

戦争なんかがいい例で本来、人を殺す事なんか当たり前によくない事なんだけど、過酷な戦場ではいちいちそんな事を考えてられない。

人を撃つ事に一々心を痛めていては、話しにならない。

 

ちなみに、戦場で優秀だった兵士ほど、日常生活に戻ったら使い物にならないと言う話しを聞いた。

夜の世界もそれに似た側面があると思う。

人を騙して大金を稼ぐ事を覚えたら、堅気の世界で生きていくのは厳しい。

 

キャバクラや風俗など、水商売の女の子が昼間の仕事に戻るのも難しい。

って言うのは、簡単に大金を稼ぐ事を覚えてしまって、デフォルトが崩れてしまっているからだと思う。

 

 


  

N子からはラインをブロックされたり解除されたりしながら、時々連絡が来たが、完全に頭がおかしくなっていた。

 

「未来の幸せの為に私は今頑張るの。どれだけ辛い思いをしてもしゅうさんをナンバー1にしなきゃいけないの」

そんな風に完全に頭がいかれきった発言をしていた。

完全に丸め込まれていた。

 

「お互いガチで愛し合ってるから」

とか、キモい発言をしていたけど、しゅうさんは店以外では一切会ってくれなかったらしい。

 

「オレが夢を叶えてナンバー1になるまで外では会えない。」

と言われたらしく、眠らずに働いて、しゅうさんをナンバー1にする事に必死になっていた。

 

そんなこんなでN子の担当のしゅうさんは僕より新人であるのに関わらずあっと言う間に、ライバル店のナンバー2まで登り詰めた。

 

彼女以外にも当然客はいたのだろう。 

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 ーーーエピソード16へ続くーーー

 

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スラットタワー

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アラサーホストになる【エピソード14 ホストクラブの役職について】

 

それから何ヶ月か僕はナンバーをキープした。

しかし、全てナンバー6でナンバー5までの壁が微妙に高かった。

うちの店には幹部が4人いて、もう一人勢いに乗ってる焔さんという先輩が多少の順位変動はあるものの、店の売り上げを支えていた。

 

その内の誰か一人に勝たなきゃナンバー5に食い込む事は出来ず、この壁がなかなか高かった。

まあ、昼間サラリーマンでバイトの僕が、その下に次いでいただけでもそこそこの事だと思うし、微妙に誇らしくもあった。

 

そうは言っても、僕の最高売り上げは11月に出した小計 30万円。

その時の給料だって12万とかだ笑

それでナンバーに載れるって事だから、それだけ経営もギリギリだったって事だ。

 

歌舞伎では大学に通いながら、月間1000万売っているようなホストもいるし、本当に化け物だと思う。

でも、まあこれがどれだけすごい事かって言ったら、芸能界で成功するくらいの話しだと思う。

 

いや、幹部って何やねん!

って言う人がいると思うから、ここでホストクラブの役職について説明する。

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ホストクラブの役職について

 

ホストクラブの従業員には、売り上げに応じて役職が与えられる。

役職があれば、人気ホストだと言う事が分かるし、それだけで人気に拍車がかかる。

 

役職の名前や、売り上げの基準は店によってまちまちなので、うちの店の基準で説明したいと思う。

 

 

主任

 

月間売上げが200万円を3ヶ月連続で超すと与えられる。

 

僕が働いていた当時ではうちで一番上の役職だ。

主任はホスト歴は12年と言っていたから、まだ盛り上がる夜の立川の一時代を間違いなく築いた人だ。

昔の主任の暴君ぶりは凄まじく、卓で客の事を殴るは、従業員と喧嘩するはで、いわゆる完全なるオラオラ系だったらしい。

しかし、僕が入った時にはもうホストとして燃え尽きていたのか、完全にやる気が無さそうだった。

売り上げも小計30万から50万をいったりきたりするくらいだった。

 

性格は無口でクールな感じだが、対照的に安心感もあってなんとなく人を惹きつけるオーラがある。

主任はこのご時世でホストなのに、スマホを持っておらずガラケーで営業をしていた。

理由は「よく分からないから」との事。

ラインをやっていないので、グループラインでの一括連絡が出来ず、代表にスマホを買えよと文句を言われていたが 一向に買う気配はなかった。

その辺の意味深なこだわりと、ミステリアスさが僕は好きだったし、主任の魅力だったのだと思う。

 

 

主幹

 

月間売上が150万円を3ヶ月連続で超すと与えられる。

 

主任に次いでうちの店でえらかったのが主幹だ。

役職こそ主任の方が上だが、僕が入ってから、うちの店でナンバー1を張り続けたのはずっと主幹だった。

 

ただ、本当に驚くべきことがこの主幹のルックスだ。

普通にぶさいくなのだ。

 

年齢は非公開だったが、噂によると40歳を超えているとの事だ。

僕も初めてうちの店のサイトを見た時、驚愕した。

 

この人がナンバー1!?」

しかし、本当にホストに見た目は関係無いと思う。

全く関係無いと言えばもちろん嘘になるが、本当にこの売れている人の理由とは言葉で説明出来ない何かがある。

 

だからこそ面白いし、だからこそ自分にもできると思えた。

ホスト全体で見てもブサイクなのに売れている人はたくさんいるし、イケメンなのに全然売れていない人もたくさんいる。

もちろん運が占める割合もかなりでかいが、永続的に売れ続けるには確実に何かがある。

 

僕から見た限り、主幹の強みと言えば圧倒的なトークカだ。

どんな席でも、主幹が来れば確実に空気が一変する。

基本的に主幹がヘルプで席について盛り上がらない事は無い。

まくしたてるように喋り倒して、そこにスポットライトが当たる。

そこら辺のカリスマ性が軍閥を抜いていた。

 

しかし、それが売れ続ける秘決かと言ったら多分違うと思う。

トークカと売り上げもそこまで関係無い。

主幹はヘルプの席では喋り倒して盛り上げるが、自分の客の席では黙っている事が多い。

まあ、これはホストでは意外によくある事なのかもしれないんだけど、客と深い関係を築けば築くほど、話す事も無くなるのだ。

 

恋人といる時だって毎回盛り上がっていたら異常だし、それに近い。

もちろん人によるけどホストと太い客はほとんど恋人のような関係だと思ってもらっても問題無いと思う。

 

主幹が売れ続けていた理由は、ホストと言う仕事に対するまじめさだ。

遅刻欠勤は一切なし客に対する連絡のマメさ、いつ如何なる時も売り上げを追いかけ続け妥協しない所、24時間ホストでいようと言う意識の高さがずば抜けていたのだと思う。

 

ホストたるもの、客からの連絡はいつ如何なる時でも返すべきと言うジンクスがある。

そして時間が許す限り、客と会って時間を使う事。

これが言わば売れる秘訣と言われている。

その辺の意識の高さをずっと持ち続けていたからこそ、ナンバー1をキープ出来ていたのだと思う。

 

客がシャンパンを入れられなくて、キレて泣かしていた事もあるくらいだ。

こんな事を言うとめちゃくちゃひどいホストに思えるが、売り上げにこだわり続けるストイックさの表れだし、売れてるホストなんて結構そんなもんだと思う。

 

 

幹部

 

そして、主幹の下の役職が幹部だ。

幹部以上の役職の人をまとめて幹部というから少しややこしい。

100万円以上を3か月連続で売り上げる事が条件だ。

 

一人目の幹部はmioさん。

服装は基本的に黒で、ドクロのものをよく身に着けていた。

 

このmioさんが店で一番恐れられている存在で、後輩に対して厄介な先輩であった。

嫌いな奴はとことん嫌いいじめる。

 

そして酒が半端なく強くて鏡月の瓶をロックで飲んで、一人で余裕で空けられるくらいだ。

ヘルプに対する酒の強要も多くて、容赦なく飲ませる。

mioさんの席についたヘルプが潰れる事はよくある事だった。

僕も何度か鏡月ロックを一気させられて潰された。

 

だからと言ってめちゃくちゃ嫌な人では無く、対照的に後輩の面倒見も一番良かった。

mioさんだけはやたらと後輩に絡んできたし、プライベートでもよく遊んでいた。

僕が飲みすぎて吐いた時も介抱してくれたし、嫌われてる人には嫌われてたけど、慕われている人には慕われてたから、まあちょっと度が過ぎたSって感じ。

 

ドSな人がたまに優しさを見せるとめちゃくちゃ優しく感じる。

多分客にもそんな風に接していたから、それがmioさんの強みだったのだと思う。

 

 

最後にもう一人の幹部の楓さん。

楓さんがうちの店で一番の古株でホスト歴は13年と言っていた。

高校を卒業してからずっとホストをやっているらしい。

 

本来ホストと言えば、色白で細くて、髪が長いイメージがあるけど楓さんはそれとは真逆。

短髪でガタイが良くて髭を生やしていて、日サロに通っている。

パッと見、渋谷のクラブ辺りにいるパリピに見える。

みんな最初は怖い人だと勘違いするけど、これも真逆。

謙虚で真面目で常に気遣いを忘れない紳士的な性格だった。

 

 

売れるホスト

 

そして幹部ではないもの、常に売り上げ上位にいたのがほむらさん。

派手髪で、服装もチャラくて、うちでは一番の花形ホストだ。

僕が入る一年前くらいに入店して、年齢は28歳って言ってたけど全然年下に見える。

僕が入った当初はさほど売れていなかったもの、努力を積み重ね着実に売り上げを伸ばしていき、11月には不動のナンバー1だった主幹を越し、見事ナンバー1に輝いた。

 

性格はオラオラ系で、シャンパンをガンガンあおる。

とにかく売れる為に必要な努力を着実にこなしてきたのが、ナンバー1になった理由だと思う。

出会い系で一日に何百件もメッセージを送り、客に時間を使い一週間家に帰ってない。

なんて言っている事がよくあった。

  

ただ、それだけ結果を出しても客に金を使ったり、ブランドの服を買ったりでこの人も生活はかつかつだったっぽい。

 

 

 

 

 ーーーエピソード15へ続くーーー

 

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幹部の楓さん

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