アラサーホストになる【エピソード18 ぴえん系】

 

ぴえん系

 

連日キャッチに出ていると、ホストに来そうな感じの人と、そうでない人の見分けがつくようになる。

あとは水商売の女の子と、そうでない女の子の見分けもなんとなくつくようになってくる。

ホストに通う客の大半は水商売の子だから、ターゲットは専ら水商売っぽい子だ。

 

そんな風にキャッチをする中一人の女の子に声をかけた。

 

名前は「A子」って事にしとく。

 

見た目は当時の流行語で言うと、いかにもな感じの「ぴえん系」

ぴえん系が何か分からない人は、ググってくれ笑

 

 

彼女が目の前を通った時なんとなくビビッと来て、反射的に声をかけていた。

 

服装はぴえん系だから、全然タイプじゃないんだけど、顔はめちゃくちゃ整っていてアイドルでも通用するくらいだと思った。

 

ただ性格はどぎつかった。

 

てっきりふわふわした感じの子かと思ったら、返ってきた第一声が低めの声で「なにお前?」だった。

 

それでも立ち止まってくれたのだから、話す気はあるのだろうと思って話した。

 

「なにお前?スカウト?」

 

「あ、こう見えて一応ホストをやっているんですよね笑」

 

「ウケるその顔でホストwwww」

 

「一応先月ナンバー6だったんすけどね笑」

 

「ウケる周りどんだけブスなんだよwww普通にブスじゃんwwwww」

 

 

(火の玉ストレート!!上等じゃねえか!笑)

 

 

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冒頭から、ディスられまくったけど、不思議とさほどムカつきはしなかった。

多分この仕事を始めてからディスられる事に対しての耐久性がついてきたこともあるけど。

 

僕を批判しまくってくるくせに不思議とその場から離れようとしない。

余程暇なのだろうか。

 

聞いてもないのに自分の事をベラベラ喋ってきた。

簡潔に彼女の事を説明すると彼女は立川のデリヘルで働いていて、店でナンバー1。

実際に元アイドルで、年齢は19歳。

歌舞伎の出張ホストに通っている。


出張ホストとは、簡単に言えば女性版風俗の事だ。

ただ、この頃、担当の出張ホストとは関係が上手く行っていないらしい。

 

立川にホストがある事は知らなかったらしい。

散々ディスって来たけど、ラインを聞いたら、普通に教えてくれた。

 

「今日自撮り盛れたから送ってあげる」

彼女はそう言うと、いきなり大量の自撮りを送ってきた。

 

全然意味が分からなかった。

 

変な子だな。

と思った。

 

 

「ここで話していてもあれだし、良かったらお茶でも飲まない?」

 

いきなり店に誘うのもあれだと思ったので、喫茶店で話しをする事にした。

 

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鏡依存症の子

 

席につくや否や、彼女は前髪が崩れたと言ってMCMのカバンからピンク色の手鏡をとりだして、しきりに前髪を直し始めた。

 

それから、ヘアアイロンや、リップなど、バサバサとメイク用品を大量に広げてメイクを直し始めた。

最初だけ気になったから直すのかなと思ったら、彼女は最後まで僕の目はほとんど見ず、鏡で自分の顔を眺めながら話し続けた。

 

もちろん、目の前の僕に興味が無いという理由も少なからずあるのだろうけどこれは鏡依存だ。

恐らく醜形恐怖症と言う奴だろうと思った。

 

極度な自己背定感の低さから、自分の外見にどこかおかしな所が無いかと、常に気になってしまう強迫性障害の一種だ。

実際に彼女は奇麗だし、傍からみればおかしな所なんて一つもない。

強いて言うならばずっと鏡を見ているのがおかしい。

 

整形依存症で、何度も整形を繰り返して不気味な顔になってしまっている人をテレビ等で見た事があると思う。

代表的な例で言えば一時期話題になった扇風機おばさん

自分の外見が気になるあまり、整形を繰り返し、整形をしないと落ち着かなくる。

扇風機おばさんの場合シリコンを注射するお金が無くなって、自らで顔に調理用油を注射し、その結果顔面が扇風機のように腫れ上がってメディアから注目を浴びてしまった。

 

これはあまりにも短絡的な例なんだけど、醜形恐怖症の成れの果てと言った所だろうか。

扇風機おばさんの死因は自殺ではないけど、醜形恐怖症の人の自殺率は正常の人の45倍にあたると言われている。

まあ、もちろん思春期から、20代前半にかけて、自己肯定感が保てず、一時的に症状が発生し、気づいたら治ってると言うケースがほとんどなんだろうけど、A子は結構度が過ぎていた。

 

 


 

「いつまで鏡を見ているの?」

 

等とは、聞いていけない。

彼女が鏡を見続けている事には一切触れず、話しをした。

 

ありとあらゆる事に不満があるらしい彼女は、僕にあらゆる事を愚痴ってきた。

丁度ストレスがたまっていて、誰かにぶつけたかったのかもしれない。

そんな時に僕が現れた訳だ。

 

家族の事や、コンビニの店員、はたまた道ですれ違って肩がぶつかったおじさんの事まで。

彼女は鏡をのぞき込んだまま、 早口でそれらの人の事を罵った。

 

「この子は生きるのが大変だろうな」

そんな風に思いながら、僕は帳尻を合わせて相槌を打った。

 

「仕事は大変?」

と、聞くと、彼女は鏡から目を離して言った。

 

 

「てか、今日来たジジイがマジキモかった!70歳超えたジジイのくせに、ちくび噛んでとか言ってくるしマジ気持ちわりい!病んだ!泣きそう!」

 

周りの席の人達が明らかにこっちを見ていた。

 

少し声が大きいなと思ったけど、我慢して

 

「それはキモいね。」

と、相槌を打った。

 

これが彼女との出会いだった。

 

 

 

ーーーエピソード19へ続くーーー 

 

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いつかのイベントの時の僕

これはひどい

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