アラサーホストになる【エピソード14 ホストクラブの役職について】

 

それから何ヶ月か僕はナンバーをキープした。

しかし、全てナンバー6でナンバー5までの壁が微妙に高かった。

うちの店には幹部が4人いて、もう一人勢いに乗ってる焔さんという先輩が多少の順位変動はあるものの、店の売り上げを支えていた。

 

その内の誰か一人に勝たなきゃナンバー5に食い込む事は出来ず、この壁がなかなか高かった。

まあ、昼間サラリーマンでバイトの僕が、その下に次いでいただけでもそこそこの事だと思うし、微妙に誇らしくもあった。

 

そうは言っても、僕の最高売り上げは11月に出した小計 30万円。

その時の給料だって12万とかだ笑

それでナンバーに載れるって事だから、それだけ経営もギリギリだったって事だ。

 

歌舞伎では大学に通いながら、月間1000万売っているようなホストもいるし、本当に化け物だと思う。

でも、まあこれがどれだけすごい事かって言ったら、芸能界で成功するくらいの話しだと思う。

 

いや、幹部って何やねん!

って言う人がいると思うから、ここでホストクラブの役職について説明する。

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ホストクラブの役職について

 

ホストクラブの従業員には、売り上げに応じて役職が与えられる。

役職があれば、人気ホストだと言う事が分かるし、それだけで人気に拍車がかかる。

 

役職の名前や、売り上げの基準は店によってまちまちなので、うちの店の基準で説明したいと思う。

 

 

主任

 

月間売上げが200万円を3ヶ月連続で超すと与えられる。

 

僕が働いていた当時ではうちで一番上の役職だ。

主任はホスト歴は12年と言っていたから、まだ盛り上がる夜の立川の一時代を間違いなく築いた人だ。

昔の主任の暴君ぶりは凄まじく、卓で客の事を殴るは、従業員と喧嘩するはで、いわゆる完全なるオラオラ系だったらしい。

しかし、僕が入った時にはもうホストとして燃え尽きていたのか、完全にやる気が無さそうだった。

売り上げも小計30万から50万をいったりきたりするくらいだった。

 

性格は無口でクールな感じだが、対照的に安心感もあってなんとなく人を惹きつけるオーラがある。

主任はこのご時世でホストなのに、スマホを持っておらずガラケーで営業をしていた。

理由は「よく分からないから」との事。

ラインをやっていないので、グループラインでの一括連絡が出来ず、代表にスマホを買えよと文句を言われていたが 一向に買う気配はなかった。

その辺の意味深なこだわりと、ミステリアスさが僕は好きだったし、主任の魅力だったのだと思う。

 

 

主幹

 

月間売上が150万円を3ヶ月連続で超すと与えられる。

 

主任に次いでうちの店でえらかったのが主幹だ。

役職こそ主任の方が上だが、僕が入ってから、うちの店でナンバー1を張り続けたのはずっと主幹だった。

 

ただ、本当に驚くべきことがこの主幹のルックスだ。

普通にぶさいくなのだ。

 

年齢は非公開だったが、噂によると40歳を超えているとの事だ。

僕も初めてうちの店のサイトを見た時、驚愕した。

 

この人がナンバー1!?」

しかし、本当にホストに見た目は関係無いと思う。

全く関係無いと言えばもちろん嘘になるが、本当にこの売れている人の理由とは言葉で説明出来ない何かがある。

 

だからこそ面白いし、だからこそ自分にもできると思えた。

ホスト全体で見てもブサイクなのに売れている人はたくさんいるし、イケメンなのに全然売れていない人もたくさんいる。

もちろん運が占める割合もかなりでかいが、永続的に売れ続けるには確実に何かがある。

 

僕から見た限り、主幹の強みと言えば圧倒的なトークカだ。

どんな席でも、主幹が来れば確実に空気が一変する。

基本的に主幹がヘルプで席について盛り上がらない事は無い。

まくしたてるように喋り倒して、そこにスポットライトが当たる。

そこら辺のカリスマ性が軍閥を抜いていた。

 

しかし、それが売れ続ける秘決かと言ったら多分違うと思う。

トークカと売り上げもそこまで関係無い。

主幹はヘルプの席では喋り倒して盛り上げるが、自分の客の席では黙っている事が多い。

まあ、これはホストでは意外によくある事なのかもしれないんだけど、客と深い関係を築けば築くほど、話す事も無くなるのだ。

 

恋人といる時だって毎回盛り上がっていたら異常だし、それに近い。

もちろん人によるけどホストと太い客はほとんど恋人のような関係だと思ってもらっても問題無いと思う。

 

主幹が売れ続けていた理由は、ホストと言う仕事に対するまじめさだ。

遅刻欠勤は一切なし客に対する連絡のマメさ、いつ如何なる時も売り上げを追いかけ続け妥協しない所、24時間ホストでいようと言う意識の高さがずば抜けていたのだと思う。

 

ホストたるもの、客からの連絡はいつ如何なる時でも返すべきと言うジンクスがある。

そして時間が許す限り、客と会って時間を使う事。

これが言わば売れる秘訣と言われている。

その辺の意識の高さをずっと持ち続けていたからこそ、ナンバー1をキープ出来ていたのだと思う。

 

客がシャンパンを入れられなくて、キレて泣かしていた事もあるくらいだ。

こんな事を言うとめちゃくちゃひどいホストに思えるが、売り上げにこだわり続けるストイックさの表れだし、売れてるホストなんて結構そんなもんだと思う。

 

 

幹部

 

そして、主幹の下の役職が幹部だ。

幹部以上の役職の人をまとめて幹部というから少しややこしい。

100万円以上を3か月連続で売り上げる事が条件だ。

 

一人目の幹部はmioさん。

服装は基本的に黒で、ドクロのものをよく身に着けていた。

 

このmioさんが店で一番恐れられている存在で、後輩に対して厄介な先輩であった。

嫌いな奴はとことん嫌いいじめる。

 

そして酒が半端なく強くて鏡月の瓶をロックで飲んで、一人で余裕で空けられるくらいだ。

ヘルプに対する酒の強要も多くて、容赦なく飲ませる。

mioさんの席についたヘルプが潰れる事はよくある事だった。

僕も何度か鏡月ロックを一気させられて潰された。

 

だからと言ってめちゃくちゃ嫌な人では無く、対照的に後輩の面倒見も一番良かった。

mioさんだけはやたらと後輩に絡んできたし、プライベートでもよく遊んでいた。

僕が飲みすぎて吐いた時も介抱してくれたし、嫌われてる人には嫌われてたけど、慕われている人には慕われてたから、まあちょっと度が過ぎたSって感じ。

 

ドSな人がたまに優しさを見せるとめちゃくちゃ優しく感じる。

多分客にもそんな風に接していたから、それがmioさんの強みだったのだと思う。

 

 

最後にもう一人の幹部の楓さん。

楓さんがうちの店で一番の古株でホスト歴は13年と言っていた。

高校を卒業してからずっとホストをやっているらしい。

 

本来ホストと言えば、色白で細くて、髪が長いイメージがあるけど楓さんはそれとは真逆。

短髪でガタイが良くて髭を生やしていて、日サロに通っている。

パッと見、渋谷のクラブ辺りにいるパリピに見える。

みんな最初は怖い人だと勘違いするけど、これも真逆。

謙虚で真面目で常に気遣いを忘れない紳士的な性格だった。

 

 

売れるホスト

 

そして幹部ではないもの、常に売り上げ上位にいたのがほむらさん。

派手髪で、服装もチャラくて、うちでは一番の花形ホストだ。

僕が入る一年前くらいに入店して、年齢は28歳って言ってたけど全然年下に見える。

僕が入った当初はさほど売れていなかったもの、努力を積み重ね着実に売り上げを伸ばしていき、11月には不動のナンバー1だった主幹を越し、見事ナンバー1に輝いた。

 

性格はオラオラ系で、シャンパンをガンガンあおる。

とにかく売れる為に必要な努力を着実にこなしてきたのが、ナンバー1になった理由だと思う。

出会い系で一日に何百件もメッセージを送り、客に時間を使い一週間家に帰ってない。

なんて言っている事がよくあった。

  

ただ、それだけ結果を出しても客に金を使ったり、ブランドの服を買ったりでこの人も生活はかつかつだったっぽい。

 

 

 

 

 ーーーエピソード15へ続くーーー

 

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幹部の楓さん

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