アラサーホストになる【エピソード12 爆弾をするホスト】

 

ホストクラブの爆弾とは

 

ある日、あゆむちゃんがN子から裏引きをしている事が発覚した。

 

本来、客は担当のホスト以外と連絡を取る事が禁止されている。

基本的にホストクラブは永久指名制で、一度担当が決まったら指名を変更する事は出来ない。

他のホストと外で会うのも連絡をとるのも当然禁止だ。

 

なので新規で来た客と、連絡を取っていたとしても、指名が決まった時点で、その客のラインはブロックしなくてはいけない。

 

そんな事は当然ホストも、客も分かっている。

 

これを無視する事を、ホスト用語で 「爆弾」と言って、爆弾をしたホストには多額の罰金が課される。

 

そういうルールがある一方、案外暗黙の了解で、それらが許される事もある。

 

N子は元々あゆむちゃんが連れて来た客だし、何かと協力してくれた事もあり、彼女と連絡を取っている事も知っていた。

 

ただ、あゆむちゃんからしたら、N子と連絡を取る事のメリットが無い。

何か怪しいと思いながら、黙認していた。

 

f:id:Hm88100608:20210220011656p:plain

 


 

あゆむちゃんとゆか氏が、N子の服装があまりにもダサいからと言う理由で勝手に「全身コーディネートする。」と言って、服やらズボン、靴をプレゼントしてくれた事があった。

 

とにかく彼らはお節介がすぎた。

 

まあ、確かに彼女は毎日同じパーカーでみすぼらしかったし、水商売をする上で見た目に気を使う事なんて当たり前の事だから、僕も意識しては欲しかったけど、この二人の好意は極力受け取りたくない。

後々面倒くさくなる事が分かってる。

 

「いいよそんな事しないで!」

と、僕は断ったのだが、

 

「絶対服買った方がいいでしょ!」

の一点張りで、気づいたら購入してたのだ。

 

彼女も「服は自分で選びたい」と言っていたのに、完全にシカトだった。

 

そんなこんなであゆむちゃんとゆか氏が買ってきたのは、いかにも女の子っぽいフリフリした洋服ばっかだった。

 

「似合う訳ねーだろ」

と、思った。

 

いざ、着て見るとやっぱり絶望的に似合ってなくて、いつものパーカーの方が全然マシだった。

 

「別に着たく無い服は着なくていいんだからな」

と、言うとその後一度も二人が選んだ服を身に着ける事はなかった。

 

プレゼントと言っていたくせに、やはり後々金を請求された。

 

例のスカウトに送る内容証明の作成費についてもやはり請求された。

 

「来月にはスカウトから金が振り込まれるはずだから」

と、言っていて、N子もそれを信じて払っていたけど、当然金が振り込まれる事なんて無かった。

多分そもそも内容証明なんて作って無いんだと思う。

 

他にもそんな風に、何かと理由をつけてあゆむちゃんがN子に金を要求する事が増え始めた。 

 

 


 

金が絡むと面倒なあゆむちゃんだったけど、この時僕は彼と仲良くしていて、二人で温泉に行ったりサッカーに行くくらいの仲だった。

二人でいる分にはだるい事も無いし、気もあったしそこそこ楽しかった。

  

しかし流石に目を瞑ってられなくなった。

理由も理由で理不尽だし、N子が変に金を巻き上げられればその分僕の売り上げが落ちる事になる。

それは僕にとって不本意でもあるし、何より流石に彼女が可哀想だと思った。

 

喧嘩して、店にいずらくなっても困るけど抗議するしか無かった。

 

あゆむちゃんには支払いをやんわり断って、N子と連絡を取るのを辞めるように言った。

 

N子にも、お金も払わなくていいし、あゆむちゃんとはもう連絡を取らないように言って、ラインもTwitterもブロックさせた。

 

しかし、更なる裏引きが発見したのはその後だった。

 

f:id:Hm88100608:20210213180256p:plain

 

 

爆弾するホスト

 

この時、あゆむちゃんは遅刻欠働の多さ、日頃の素行の悪さが目立ち、他の従業員からもあまり信頼されていなくなっていた。

 

エースだったゆか氏も、彼に不信感を持ち始めて病んでいるようだった。

あゆむちゃんとゆか氏は、どうやら僕に内緒でN子と3人で時々会っていたらしく、まあ、言ってしまえばN子は財布みたいな感覚だったのだろう。

 

彼女も彼女で、二人に不信感を持っていたのは当たり前だから、断ればいいのにそれが出来なかったのは単純に彼女の性格だと思う。

 

そんな時、あゆむちゃんがゆか氏の目の前でN子から8万円を裏引きをした。

流石にゆか氏も度が過ぎると思ったのか、僕とあゆむちゃんの先輩であるたまきさんに相談した。

 

そもそもホストにホストの事を相談してしても基本的に筒抜けだ。

ヘルプは客から相談や、内緒話をされた時、全て担当に話さなきゃいけないと言うルールがある。 

 

僕はそんな事をいちいち代表にチクろうなんて気もなかったが、 たまきさんが代表に報告をして、爆弾という事になった。

 

更にあゆむちゃんは、うちの店を辞めて歌舞伎町に戻るつもりだったらしく、N子を客にしようとしていたみたいだ。

なのであゆむちゃんはN子に僕の悪い情報を吹き込み、彼女に不信感を抱かせようとした。

ホスト同士の潰し合いもよくあるものだ。

 

N子はメンヘラなので、僕が相手をしなければすぐ病む。

一人でいるのが嫌だし、ケータイ依存症なので、断るという事をそもそもしない。

誰かに誘われればホイホイついて行く。

 

しかし、結局金を巻き上げられて、また彼女は病んで僕に泣きついてきた。

 

何と言うか堂々巡りすぎる。

物語の登場人物が少なすぎる。

 

どう考えても、悪者はあゆむちゃんだろと言う事になり、結局彼女の中で

「信頼出来るのは隼人さんしかいない」と言う謎の理届で、僕の所に戻ってくる形になった。

 

結局あゆむちゃんは、罰金を払う事は無かったが、それから店に来る事も無く、二度と会うこともなかった。

歌舞伎町でホストをしているかどうかは知らない。 

 

 

 

 ーーーエピソード13へ続くーーー 

 

www.kyabeta.net

 

 

f:id:Hm88100608:20200607005140j:plain